第53回:各国のビジネス環境におけるリスクの総合的ランキング
2018 FM Global Resilience Index
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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米国の損害保険会社FM Globalは同社のサイト上で「2018 FM Global Resilience Index」というデータを公開している。これは次のような情報源から得られた情報を基に約130カ国のビジネス環境に関するリスクを評価した結果をまとめたものである。
- 国際通貨基金(IMF)
- 世界銀行
- 世界経済フォーラム
- 米国エネルギー情報局(Energy Information Administration)
- 国際連合
- Freedom House (注1)
評価に含まれる要因は本稿のトップにある画像のような構成になっており、「経済面」、「リスクの内容」、「サプライチェーン」という3つのカテゴリーに分けられた12の個別の要因に関する評価結果を用いて計算されている。
これらの要因に関する情報を収集・評価して計算された結果は、まず国ごとのランキングとして図1のように表示される。例えば図 1 は地図上でインドをクリックした状態であるが、(図では小さくてわかりにくいと思うが)地図上にインドのスコアが 43.1で60位であることが表示されている。また図の下端に小さい丸が並んでいるが、これは評価対象の各国をランキング順に並べたものであり(右側がよりレジリエンスの高い国)、黄色の丸印で示されているのが全体におけるインドの位置である。
なお各国はランキングに応じて4分の1ずつに塗り分けられており、最も濃い青色の部分が、最上位の国から4分の1の範囲内に含まれている国である(注 2)。
また図2はインドの評価結果の内訳を表示したものである。ここでは上の方のタブをクリックすることによって「経済面」「リスクの内容」「サプライチェーン」の3つのカテゴリーごとの評価結果が見られるようになっており、図2は「サプライチェーン」の評価結果が表示された状態である。「サプライチェーン」のカテゴリーだけで評価するとインドは55位となっている。ちなみに「経済面」では 100 位、「リスクの内容」では51位となっており、これらを含めた総体的な評価結果が60位ということである。
なお右側の円形の図のなかで、「Supply Chain」と書かれている部分の内側にある扇形の部分をクリックすると、それぞれの個別要因に関する評価結果が表示される。ちなみにインドの場合「汚職のコントロール」で 72位、「インフラの質」で 47位、「現地のサプライヤーの質」で 72位、「サプライチェーンの可視性」で 37位となっている。
図2の下端部分は図1と同様に全体での位置が表示されるようになっており、上の部分で何の評価結果を表示させるかを切り替えると、これに連動して図も変化する。さらに、任意の複数国間で評価結果を比較することもでき、多機能かつ分かりやすいデザインのサイトとなっている。
しかしながらわかりやすい反面、サイト上には図と数字の情報しか表示されないので、国ごとの状況を大まかに比較することぐらいしかできない(注3)。したがってビジネスにおける何らかの意思決定のためには、より詳細な情報収集が必要になると思われるが、本サイトはそのような情報収集を始める際の入り口としての価値があるのではないかと考えられる。
なお、同サイトにはExecutive Summaryや方法論の解説がPDFファイルで掲載されている。特にExecutive Summaryには経年の傾向が記述されているので、ウェブ上のデータと合わせて読まれることをお勧めしたい。
■ 報告書本文の入手先
https://www.fmglobal.com/research-and-resources/tools-and-resources/resilienceindex
注1)Freedom Houseとは米国に本拠地を置く国際NGOで、自由と民主主義を広めることを目的として活動しており、国別自由度ランキングや各国の報道自由度ランキングなどの報告書を発表している。https://freedomhouse.org/
注2) 十分な情報がないために評価結果が示されていない国があるため、実際には5段階に塗り分けられている。
注3) 全ての数値データをExcelファイルとしてダウンロードすることもできる(連絡先情報の登録が必要)。
(了)
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