「災害福祉フォーラム」が目指すコト
第42回:9月30日第1回研究会は介護施設のBCP
跡見学園女子大学観光コミュニティ学部/
教授
鍵屋 一
鍵屋 一
1956年秋田県男鹿市生れ。早稲田大学法学部卒業後、板橋区役所入区。防災課長、板橋福祉事務所長、契約管財課長、地域振興課長、福祉部長、危機管理担当部長(兼務)、議会事務局長を経て2015年3月退職。同時に京都大学博士(情報学)。同年4月から跡見学園女子大学観光コミュニティ学部コミュニティデザイン学科教授、法政大学大学院、名古屋大学大学院等の兼任講師を務める。主な有識者会議としては内閣府「避難所の役割に関する検討委員会」座長、「地域で津波に備える地区防災計画策定検討会」委員、「防災スペシャリスト養成企画検討会」委員等。役職として内閣府地域活性化伝道師、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、NPO法人東京いのちのポータルサイト副理事長、(一社)マンションライフ継続支援協会副理事長、認定NPO法人災害福祉広域支援ネットワークサンダーバード理事など。著書に『図解よくわかる自治体の防災・危機管理のしくみ』『地域防災力強化宣言』『福祉施設の事業継続計画(BCP)作成ガイド』(編著)『災害発生時における自治体組織と人のマネジメント』(共著)など。
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災害福祉フォーラムが目指すコト
前回お知らせした災害福祉フォーラム設立シンポジウムは、現地会場およびオンライン合わせて約200人が参加し、盛大に開催された。最初に、私が「災害福祉フォーラムが目指すコト」と題して簡単なプレゼンを行った。
日本では高齢化や孤立が進む一方、支え手となっていた地域のつながりが弱まり、自治会等への参加者の減少、消防団や自治体職員の減少により、社会は著しく脆弱性が高まっている。それが災害時に加速することは、近年の被災地の状況を見ると明らかだが、対策は十分には進んでいない。
近年、災害福祉関連で政策制度化されたものには、次のようなものがあるが、十分な実効性を伴ってはいない。
・個別避難計画
・福祉事業所BCP
・福祉避難所への直接避難
・被災高齢者等把握事業
・重層的支援体制整備事業
・災害ケースマネジメント
・地域支え合いセンター
・DWAT
・保健医療福祉調整本部
さらにほとんど進んでいないのが津波浸水区域への福祉施設の立地制限、移転支援、避難所外避難者への支援計画、福祉避難所での訓練などだ。
津波浸水区域の福祉施設
東日本大震災で、岩手、宮城、福島の3県で高齢福祉施設利用者が485人、職員173人が亡くなっている。そもそも福祉施設や医療機関は、大津波警報が出たとき、利用者を置いてスタッフだけ逃げることができるだろうか。私自身、東日本大震災後に100以上の福祉施設で話を聞き、ワークショップをしたが、全員が「利用者を置いてスタッフだけが避難することはできない」と、異口同音に話されていた。
したがって、福祉施設や医療機関は津波浸水区域に立地してはいけないはずだ。しかしNHKの調査によれば、全国の約3800もの高齢者施設が、津波で浸水のリスクがある場所に建てられ、しかも半数近くは東日本大震災のあとに開設されている(NHK高齢者施設の「津波リスク」全国MAP)。
このままでは、南海トラフ地震津波、日本海溝・千島海溝沖津波などの災害が発生すれば、福祉施設利用者、職員が同じような犠牲(津波到達まで短時間であればさらに大きな犠牲)が発生してしまう。しかもその調査数字は高齢者施設のみで、障がい者施設、児童施設、病院などは含まれていない。
関連死防止
熊本地震では、直接死50人に対し、関連死が223人にのぼる(熊本県、2023年4月13日公表)。しかも亡くなられた場所は1位が自宅で、2位が自宅から搬送された病院、両者で関連死全体の6割を超えている。したがって、関連死を防止するためには、在宅の被災者、特に高齢者を見守り、支援することが肝になる。
ところが、在宅や車中泊など「避難所外避難者」の支援全体計画があるのは全国の市町村の8.2%であり、3日以内に見守り支援などを開始するのは0.2%にとどまっている(一般財団法人日本防火・危機管理促進協会、2022年3月)。この課題は、熊本県がしっかりと記録を残したために明らかになった。
会員募集
このような課題を解決するためには、私たち災害福祉を志す者が、実践する中で感じる問題にしっかりと取り組み、研究成果を積み上げ、政治行政の重要課題としてアピールしていかなければならない。災害福祉フォーラムは、このような思いを持つ会員が切磋琢磨する「道場」となることを目指す。
すでに9月1日から災害福祉フォーラムのホームページで会員募集を行っている。会費および勉強会参加費は無料。
https://saigaifukushi-forum.jp/
【第1回研究会】
災害福祉フォーラムの第1回研究会は、「介護施設のBCP」と題し、熱海市にある社会福祉法人「海光会」の特別養護老人ホーム「海光園」の取り組みを紹介いただきます。
ここは、内閣府「国土強靱化貢献団体の認証に関するガイドライン」を満たした「レジリエンス認証」に取り組み、3回更新しています。これは福祉施設では類をみません。ホームページで毎月、「レジリエンスな組織づくり」活動している状況が見られます。8月は救急バックを新品と交換したことが報告されています。
長谷川みほ理事長は、今回の研究会で、介護BCPについて話してくださるとともに、レジリエンスが強化された施設を見せてくださる予定です。コロナ禍が完全には収束していない中で、施設見学は難しい状況ですので、ありがたい企画です。私も現地で参加し、インタビューする予定です。
BCP作成に取り組まれている福祉事業所の方には特におすすめです。ぜひ、ご参加をお願いいたします。
日時:2023年9月30日(土曜)10時~12時
テーマ:介護施設のBCP
登壇者:社会福祉法人 海光会理事長 長谷川みほ氏
参加資格:災害福祉フォーラム会員
申込締切:2023年9月28日(木曜)18時
問い合わせ:災害福祉フォーラム事務局(鍵屋一、竹本)
saigaifukushi.f@gmail.com
参加方法:オンライン(zoom)
会員になって登録が完了された方には、参加申込み時に入力したメールアドレスにzoom情報をお送りします。9月29日(金曜)中にお送りします。
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