取締役の義務・役割・責任【特別編:社外取締役】
会社法の主要ポイント(1)
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2023/07/26
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
これまで【前編】【後編】の2回に渡って、株式会社における取締役の義務・役割・責任についてご説明してきました。
取締役に関しては、令和元年改正会社法において、上場会社等に社外取締役を置くことが義務づけられました。このため、社会における社外取締役の認知が高まってきたといえます。
しかしながら、社外取締役という名称や存在は知っていても、社外でない通常の取締役と何が異なるのかといった点について、詳しく理解しているという方は多くないのではないでしょうか。
そこで今回は【特別編】として、社外取締役について取り上げます。
会社法(以下、法名省略)2条15号において、社外取締役が定義されています。同条同号では、社外取締役とは、「株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう」とされ、「次に掲げる要件」としてイ~ホが列挙されています。
ここで確認しておきたいのは、当然といえば当然なのですが、社外取締役も「取締役」であるということです。このため、株式会社との関係は(雇用関係ではなく)委任関係であり(330条)、善管注意義務(民法644条)・忠実義務(355条)が課せられ、任務懈怠責任(423条1項)を負う場合があるなどの点で、社外取締役も通常の取締役と同様です。
では、何に違いがあるのかというと、先ほどの2条15号イ~ホに列挙された要件にいずれも該当している必要があるということであり、これが「社外」性の要件であるということになります。
では、取締役に社外性の要件を付加した社外取締役という機関の意義や役割は何なのでしょうか。
これについて、例えば、取締役会を構成する取締役間において社内における(法律上ではなく事実上の)立場に上下がある場合、仮に立場が上の取締役が善管注意義務・忠実義務に違反する行為を行おうとしていても、それを立場が下の取締役が阻止することは、実際問題としては十分に期待できない面があることは否定できません。
このため、社内におけるそういったしがらみのない社外取締役の存在が、適正なガバナンスには有用であると考えられているのです。
社外取締役には、「社外者として経営陣から独立した立場から、経営(経営陣による業務執行)の監督を行う役割が期待されている」(「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」、2020 年 7 月 31 日・経済産業省、13頁)といえるのです。
弁護士による法制度解説の他の記事
おすすめ記事
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方