社外取締役と通常の取締役との違いとは(イメージ:写真AC)

はじめに

これまで【前編】【後編】の2回に渡って、株式会社における取締役の義務・役割・責任についてご説明してきました。

取締役に関しては、令和元年改正会社法において、上場会社等に社外取締役を置くことが義務づけられました。このため、社会における社外取締役の認知が高まってきたといえます。

しかしながら、社外取締役という名称や存在は知っていても、社外でない通常の取締役と何が異なるのかといった点について、詳しく理解しているという方は多くないのではないでしょうか。

そこで今回は【特別編】として、社外取締役について取り上げます。

社外取締役の要件等

会社法(以下、法名省略)2条15号において、社外取締役が定義されています。同条同号では、社外取締役とは、「株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう」とされ、「次に掲げる要件」としてイ~ホが列挙されています。

ここで確認しておきたいのは、当然といえば当然なのですが、社外取締役も「取締役」であるということです。このため、株式会社との関係は(雇用関係ではなく)委任関係であり(330条)、善管注意義務(民法644条)・忠実義務(355条)が課せられ、任務懈怠責任(423条1項)を負う場合があるなどの点で、社外取締役も通常の取締役と同様です。

では、何に違いがあるのかというと、先ほどの2条15号イ~ホに列挙された要件にいずれも該当している必要があるということであり、これが「社外」性の要件であるということになります。

社外取締役の意義・役割

では、取締役に社外性の要件を付加した社外取締役という機関の意義や役割は何なのでしょうか。

これについて、例えば、取締役会を構成する取締役間において社内における(法律上ではなく事実上の)立場に上下がある場合、仮に立場が上の取締役が善管注意義務・忠実義務に違反する行為を行おうとしていても、それを立場が下の取締役が阻止することは、実際問題としては十分に期待できない面があることは否定できません。

このため、社内におけるそういったしがらみのない社外取締役の存在が、適正なガバナンスには有用であると考えられているのです。

社外取締役には、「社外者として経営陣から独立した立場から、経営(経営陣による業務執行)の監督を行う役割が期待されている」(「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」、2020 年 7 月 31 日・経済産業省、13頁)といえるのです。