海外に進出している組織にとって、緊急事態が発生した際の現地従業員等の国外避難オペレーションは、頭の中ではその必要性が理解できていても、「まさか、そんなことは起きないだろう」と、どこか楽観視してはいないでしょうか。
スーダンで目の当たりにした在留邦人の退避
4月24日(現地時間)、今般のスーダンの情勢の緊迫化を受けて、在留邦人とその配偶者および子、合計45名の方々が、航空自衛隊のC-2輸送機にて、スーダン東部のポートスーダンからジブチに退避1しました。首都ハルツームの状況を見ると、4月15日午前(現地時間)、スーダン国軍(SAF)と準正規軍の即応支援部隊(RSF)との間で衝突が発止し、一般市民を含む50人以上の方が死亡して危険な状況に陥り、首都の空港は封鎖され、航空各会社もフライトの運航を見合わせました2。つまり、ハルツームで事態が深刻化して、在留邦人がハルツームからポートスーダン経由でジプチまで無事に退避するまで、わずか9日間です。この間、大部分の在留邦人は、通信事情が悪い中、関係部署と連携を取りながら退避に向けた準備を進めて、ハルツームからポートスーダンまでの約670キロメートルを車両で移動したようです。仮に、皆さんの従業員等が同様の状況になった場合、このような短期間で、現地オフィスの活動を停止させて従業員等を国外退避させる意思決定をし、現地で必要な支援・手続きをしつつ、退避に伴う移動中の安全を最大限確保できるような体制や制度等が、組織内で整っているでしょうか。
当事者意識を持った退避計画の重要性
今回のスーダンにおける各国の退避は、大部分の国において政府が全面的に支援しており、日本政府も内閣危機管理監をトップとする官邸対策室を設置し、現地に自衛隊機を派遣しました3。しかし、米国の場合、4月23日の段階で米軍を導入して、まずは政府関係者とその家族を最初に退避させています。その際、スーダンに在留する他の米国人等については、「空港が閉鎖されており、現時点で、米政府による米国市民の避難実施は安全とはいえいない」と報じられているとおり4 、事実上、非政府職員の退避支援を後回しにしたようです(その後、米国政府は、4月29日、政府が準備した車列で米国人等をポートスーダンに避難5)。弊社でも、スーダンに在留する従業員等に対して、安全、医療、ロジスティクスの面から支援するとともに、バス数台を手配して約70人をハルツームから退避させました。海外での緊急事態の様態は千差万別のため、状況によっては、「自力で従業員の避難の是非を判断しなければならない」、「支援はすぐに来ないかもしれない」、「自分達で指定された場所までは移動する必要がある」など、最悪の状況を想定して平素から準備しておく必要があります。
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