今回は、危機管理や事業継続などに関するソリューションを提供している OnSolve 社が2023年4月に発表した「2023 OnSolve Global Risk Impact Report」を紹介させていただく。
本報告書は次の2つのデータに基づいてまとめられている。
1) 2021年1月から2022年12月までの間に全世界で発生した、900万件以上の事象を同社が分析したもの
2) 米国企業のCEO 250人を対象として2023年1月に実施したアンケート調査
同社はさまざまな情報源から、事件・事故や災害などの発生情報を収集して、影響を及ぼしうる顧客に対して警報するというサービスを提供しているので、上の 1) は同社内に蓄積されたデータを使っていると思われる。また 2) については調査会社であるCensuswide社によって実施されている。
本報告書は下記URLにアクセスして、画面右下に表示される「Next ->」という部分をクリックした後に氏名やメールアドレスなどを登録すれば、報告書前文をサイト上で読めるようになる。PDFでダウンロードすることもできる。
https://be.onsolve.com/2023-global-risk-impact-report/
(PDF 22ページ/約 1.3 MB)
図1は前述のデータのうち 1) に基づくもので、2021年と2022年との間で危機事象の発生状況を比較したものである。「Infrastructure and Technology」と「Transportation Accidents」の2つの急増が他のカテゴリーと比べて突出している。
ここで「Infrastructure and Technology」について若干補足させていただく。英語圏におけるこの手の報告書などでは、「information technology」(IT)のことを単に「technology」と表現する場合が多いので、本報告書に関しても、これは「インフラおよび IT」と考えてよいと思われる(注1)。
実は本報告書では、図1に書かれている数字(パーセンテージ)がどのように算出された数字なのか説明されていない。報告書本文の文脈から考えて、2021年における発生件数を100%とした場合の増分だと思われるが、インフラや IT に関する事故が直近1年間で、米国内で807%、全世界で688%も増えたとは、にわかに信じがたい。もしかしたら件数ベースではなく、被害額などでの比較かもしれないが、本報告書中に説明がないのでこれ以上は分からない。
しかしながら、数字をどう見るかはさておき、インフラや IT、および交通や輸送に関する事故が急増していることは間違いないであろう。本報告書では図1の上位3つのカテゴリーについて、それぞれ1ページずつ割かれており、米国内の状況を中心に解説されている。例えばインフラに関しては、特にサウスカロライナ州やカンザス州、オクラホマ州において事故が急増していることや、米国内の送電線の70%が敷設後25年経過しているため、設備の老朽化による事故のリスクが高まっていること、2023年にも豪雪や強風による大規模停電が発生していること、送電網に対する物理的な攻撃(power grid attacks)が1年間で71%増加していることなどが説明されている。
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