G7広島サミットから読み解く国際情勢と企業リスク
第39回:経済安全保障に向き合う時代変化(5)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2023/05/12
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
経済安全保障を考慮した経営戦略を検討する際に、必要不可欠な情報が国際情勢であることは疑いようがない。今まさにG7広島サミットが開催されようとしている。関係会議や周辺を含めさまざまな動きがあり、読み解くべき情報は豊富にある。ほんの一部だが、要点と思われる事項に触れていきたい。
まず、フランスのマクロン大統領の物議を呼んだ発言だ。「欧州連合(EU)は米国の政策に追随すべきでない」と主張し、台湾有事を「われわれの危機ではない」と位置付けた。案の定、欧米各国から批判が集中し、弁明が行われている状況である。
マクロン大統領は直前に中国を訪問、しかも大規模なビジネス代表団を同伴させている。これは経済的な利益を創出する目的だけでなく、経済的互恵関係のさらなる強化により、専制主義的な強硬姿勢、力による現状変更、ジェノサイドとまでいわれる人権問題などに改善を促すことができるという考えにもとづくとの解釈もあるかもしれない。
しかし、その考えは「明らかな幻想」であり、明確に切り替える必要があるとの認識に立っているのが、西側諸国の基本スタンスではなかったか。
どちらのスタンスが正しいかという問いに対する答えは、この先の未来が決めることであり、結果を待つ以外にない。しかし、過去の歴史から「明らかな幻想」であったとの反省がなされている現実があることは認める必要がある。
その上で、さらなる互恵関係の強化が過去の歴史をも塗り替える最善策だとの主張はあり得る。ただしその場合、歴史の反省事項を今後の互恵関係強化にて改善させる論理性のある説明責任が最低限必要になるだろう。その説明はまったくない。
自分は変えられても相手を変えることはできないという現実に立脚すれば、このことの是非は問えないだろうが、民間企業が学ぶことはできる。何かというと、西側諸国の足並みを乱し、分断を生みかねない発言や行為には批判が高まるという明確な事実だ。この事実をリスクとして認識し、それを凌駕する説明責任が果たされなければ、長い目で見ればマーケットは背を向けるのではないだろうか。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方