近年、企業価値の評価は、財務情報だけでなく非財務情報も重要視されるようになりました。そのなかでも特に人的資本情報の開示が注目を集めています。
日本では2023年3月期決算から、上場企業を中心に人的資本情報の開示が義務化され、約4000社が女性管理職比率や男性育児休業取得率、男女の賃金格差などのKPIを報告書に記載しなければならなくなりました。
本稿では、人的資本を核にしたコミュニケーション戦略のポイントを、情報開示を対外的なコミュニケーション、パーソナライズドなアプローチを社内向けのコミュニケーションと整理し、お伝えします。
人的資本開示における5つのポイント
人的資本情報開示を単なる義務対応としてではなく、効果的な情報開示戦略として捉えることが重要です。先行する海外の事例を参考に、効果的な開示のポイントを以下の5つにまとめます。
情報収集:従業員の働きやすさや能力開発に関する情報を収集し、分析することが基本です。これにより、企業の強みや課題が明確になります。
例えば、マイクロソフトは、従業員の能力開発や多様性・包括性の推進を積極的に行っていて、その取り組みを非財務情報として開示しています。同社のデブ・カップ副社長は、「全員がタレントであると考え、個々の能力向上に焦点を当てるべき」と述べています。これにより、従業員がより働きがいを感じ、企業の競争力が向上することが期待されます。
人的資本ストーリーの整理:開示する情報には、企業のストーリーが反映されることが重要です。ただ単に開示項目を揃えるだけではなく、従業員の成長や企業の取り組みがどのように結びついているかを示すことが求められます。
例えば、アップルは、環境や社会貢献に関する取り組みとともに、従業員の多様性や教育に力を入れていることを強調しています。同社は、従業員向けの教育プログラムやインターンシップ制度を通じて、次世代の人材を育成することに注力しており、企業価値向上に寄与しています。
分かりやすいデータの提示:数値データを視覚的にわかりやすく伝えることが、情報開示の効果を高めます。グラフやチャートを使ってデータを提示することで、情報を把握しやすくなります。
透明性の確保:企業は、人的資本情報の開示において透明性を確保することが求められます。具体的には、第三者機関による監査や認証を受けることで、情報の信頼性を高めることができます。
持続的な改善:開示情報は、定期的に更新されることが望ましいです。企業は、継続的な改善や努力を通じて、開示情報の質を向上させることが有用です。
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