ESGは今や企業のレピュテーションを左右する強力なドライバーです。ESGを積極的に実践している企業は、優秀な人材を集め、価格を上げ、原材料の価格を下げ、市場で成功する確率が高まります。
ESGとは「環境」「社会」「企業統治」の3つの観点のことで、現在、企業の長期的な成長のためには、この3つが必要とされています。
環境 E:「気象変動対策」「エネルギー問題」「地球温暖化対策」「生物多様性の保護活動」など
社会 S:「人権への対応」「顧客対応」「従業員との関係」「地域貢献活動」など
企業統治 G:「法令遵守(コンプライアンス)」「リスク管理」「社外取締役の独立性」「情報開示」など
イギリスのPRモニタリング会社Vuelioが発表した調査によると、企業のコミュニケーション担当者の3分の1(31%)が、ESGを管理するための方針を持っていると回答していますが、41%は進行中、4分の1以上(27%)は、ESGリスクを評価・管理するための行動をとっていないと回答しています。なかでも「S(社会)」を取り扱うのは難しい問題になっています。
私たちコミュニケーション担当者は、温室効果ガスの削減で「E(環境)」を、役員に占める女性の割合を増やすことで「G(企業統治)」をアピールできるとして、「S(社会)」をどのようにアピールすればいいのでしょうか?
人権侵害、ジェンダー差別、人種・民族差別といったキーワードは、企業の評判にプラスの影響を及ぼす一方で、レピュテーションに悪影響を及ぼすリスクが大きい傾向にあります。
そこで今回は、ESGの「S(社会)」がもたらすリスクとコミュニケーション戦略への取り入れ方について考察したいと思います。
Netflixと金融機関の「S」が高評価
イギリスの調査会社ワッズの分析によると、フィランソロピー(※)と多様性が最も強力な「S」のレピュテーションドライバーであり、ネットフリックスや金融機関などが高評価を得ているとしています。
※フィランソロピー:人々の「well being」を改善することを目的とした「社会貢献活動」や「慈善活動」のことを指す
328,264の英文記事を分析したところ、メディアの可視性が最も高い企業はNetflixで、さまざまな性的指向を受容する活動により、メディアの注目を集めることに成功しました。
バンク・オブ・ノヴァ・スコシアは、女性やノンバイナリーであると認識する顧客に対し、経済的・職業的機会を増やすことを目的とし、資本や専門教育、助言サービスなどを支援。
HSBCはバングラデシュ最大のニット衣料製造・輸出企業の1つであるDBLグループに対して、ジェンダー平等をターゲットとしたサステナビリティ・ローンを組成し、メディアの注目を集めました。JPモルガンは、主に有色人種が経営する銀行や信用組合を支援する取り組みを発表。バンク・オブ・アメリカは、人種的平等を推進する4年間10億ドルのプログラムを5年間12億5000万ドルに拡大しました。
一方で、世界最大級のゲーム会社であるアクティビジョン・ブリザードは、米国雇用機会均等委員会が起こしたセクハラ訴訟の和解金として1800万ドルを支払ったため、多くのジェンダー差別に関する記事で取り上げられ、レピュテーションを大きく失墜。
マイクロソフトやアップルも、職場でのセクハラへの対応や性的指向差別の話題から大きく打撃を受けたことがわかりました。
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