RIMSの調査によると、2019年から米国・カナダのリスクマネージャーの報酬は上昇傾向を見せている。これはCOVID-19、気候変動、ロシアのウクライナ侵攻と、想定外のリスクが組織を襲っており、複雑性、不確実性が高まっていることに対応している。リスクマネジメント戦略を見直し、予期せぬリスクに備えなえなければならない必要性を組織が認識しているからである。
こうした状況はリスクマネージャーの価値を高めるとともに、他方で、その真価を問われることにもつながっている。そのため、リスクマネージャーはリスクマネジメントの価値向上はもとより、リスクマネージャーとしての能力のレベルアップにも、さらに励まなければならない 。
リスクマネジメントの価値を証明する
COVID-19への対応から学んだのは、依然として、多くの組織がリスクマネジメントを保険料の節約のためであると認識していることであったという。そうした中でも、成果を上げているリスクマネージャーは、この機会を通して、リスクマネジメントの価値を証明している。
企業にとって最大の課題は、コロナ禍の中でも、顧客や従業員をリスクにさらすことなく事業を継続することである。そのためには、関連するすべての部門が協力して、リスク対応しなければならない。新たな環境でどのようリスクが生じうるのか、個別部門が直面するリスクはもとより、それらがどのように関連し合って全社的なリスクとなりうるのかを把握することが不可欠となる。
リスクの専門家としてのリスクマネージャーは、シナリオプランニングなどのリスクマネジメント手法を活用して、そうしたリスクの組織的な把握を支援することになる。その際、重要となるのは専門的知識だけでなく、コミュニケーション力などといったソフトスキルも必須となる。多くの関連する部門との間でリスクに関連する議論を通して問題意識の共有、的確な事実認識、適切な状況分析を一緒になって行い、リスクの全体像を浮かび上がらせなければならないからである。
もちろん、そうしたコミュニケーションを通して、事業展開上でどのようなリスクが重要で、それに対してどのように対処すればリスクを軽減し、機会として活用できるのかを明らかにするためには、リスクマネージャーが会社の業務内容を理解することが前提となる。事業戦略の方向性、具体的な業務内容の知識があってはじめて、リスクに関する専門家として適切な質問を投げかけ、組織が将来のリスクに気づき、それに対応しようとの態勢構築を支援できるからである。
リスクマネージャーが企業の戦略、そして業務に高い関心を持ち続けることが、リスクマネジメントの評価を向上させるための必要条件である。
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