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保険業界の動きは、リスクマネジメントにとっては、リスク移転を行う上で重要なものであるが、リスクの動向に対する保険業界の対応を知る上でも欠かせない。この意味で、2025年、保険業界にどのような動きが予想されるかは、貴重な情報である。アメリカの保険業界が今年の動向について、いくつかのポイントを予測している

AI活用の課題

まずはAI活用に関するものである。AIの活用はますます増えているが、それに伴い物理的なリスクや人間に対する危害も心配されている。しかし、忘れてならないのはAIの機械学習によって生み出されるサービスでの課題である。多くの情報から学習、分析して、最適なソリューション・サービスを提供するのであるが、その際に、基礎となった情報に基づく差別的な偏見を含む可能性があることである。例えば雇用にAIを使う場合、差別につながりうる結果を示すことがある。利用する主体はアルゴリズムや結果に対して、人の目で検討し、チェックなければ、訴訟の対象になりうる。このリスクが高まると思われる。

政治の課題

政治の変化も、懸念材料となる。米国では保守的な方向へのシフトが進む可能性が高まっている。この傾向は、人身事故に対する従来の高額補償にブレーキをかけるかもしれない。また、それぞれの州法を超えた連邦政権での立法が、訴訟の在り方に影響を及ぼす可能性も視野に入れる必要が出てくるかもしれない。

この意味で、自動運転(AV)に対する動きは注目すべきものの一つである。レベル5に向けた路上での自動運転が進むにつれて訴訟が生じる可能性も高まる。その際、事故に対する責任を、AVメーカー、ソフトウェア開発者など関係する主体に対して、どのように割り当てる法律が制定されるかが、注目される。