論理性を見失った危機対応の危うさ
第23回:安倍元首相暗殺事件から想定するリスク思考(3)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2022/09/09
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
安倍元首相暗殺事件がいつの間にか旧統一教会問題にすり替わっている状況である。
カルト宗教問題、政教分離、霊感(開運)商法の是非は検討が必要だが、それは別途検討としていったん置き、危機管理対応、危機コミュニケーションの視点で考え直す時期が来ていると痛感する。今回はその点に関して論じたい。
危機コミュニケーションの要諦は「初動のスピード感」「事実認識」「漏れのない影響範囲の特定」「危機に対する対処」「再発防止策」の適切な説明とまとめられるだろう。そしてステークホルダーの納得を得て成功となるが、納得が得られない場合は炎上し、事態は悪化するのが常である。
言い訳や自己都合の弁明、問題認識の薄さ、対応の遅さが見え隠れすれば、ステークホルダーの納得を得ることができなくなるのは当然であり、かつては、そうしないためのノウハウがさまざまなかたちで語られてきた。しかし、現在は小手先のテクニックに走り、本質を失いつつあるのかもしれない。
ヘビークレームに対し、とにかく低姿勢を徹底し、たとえ非論理的な言いがかりだとしても聞く耳を持ち、相手に寄り添う姿勢をまずは示すべきだろう。しかし、そのクレームが感情論で現実的でない場合、答えが出せず、のらりくらりと揶揄されかねない姿勢に見えるケースも生じる。それでも長引かせるよりも損切りした方が得策と妥協し、場合によっては損害金を支払ってでも解決を図り、ことを穏便に済ませようとすることが多いのではないだろうか。
変に長引かせて感情的に膨張させるより得策なのは分かる。だが、行き過ぎるとこれが常態化し、ヘビークレームは悪質化、過激化するスパイラルに陥る。この負の循環を止めるためには、正論による勇気ある対峙が時には必要になると感じるのだ。
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