リモートワークが日常化しつつある日本。米国でも、その導入がすでに進んでいる。企業にとって、ホワイトカラーの生産性を向上させるとともに、従業員にとっても、より充実したワークライフバランスを達成させることが可能になる。こうした両者の要請が満たされるときにリモートワークの選択は合理的である。

もちろん、リモートワークの選択は、従来とは異なるリスクを伴う。すでに多くのリスクに関しては言及されてきている。リモート状態でも仕事を効率的に進められるような物理的な環境の整備が必要となり、従業員個人のモチベーションを向上させたり、管理者の統制能力を向上させたりといったマネジメントにおける対策も不可欠になる。さらに、リモートによる管理の効果的な実施、ネットワークの頻繁な活用から生じるサイバーリスクへの対策、従業員の安全、健康などの確保も考慮しなければならない。オフィスにおいて対面で管理できる状況では当然のこととして実施されていたことが、リモートでは新たな工夫が必須となる。

災害リスクへの考慮も不可欠

これらに加えて、さらに対応しなければならないリスクが認識されつつある。気候変動は従来よりも深刻な自然災害を引き起こす可能性を高めている。リモートワーカーに対しても検討を要するようなったリスクである。事実、米国では山火事、洪水などの災害が予想を上回る頻度、規模で起きているし、米国以外でも状況は同じで、昨年、世界では総額として470憶ドルに上る損害が生じたという。しかも、この傾向は増加の一途をたどっている。

自宅もオフィス同様の対応が必要

自然災害リスクに対しては、これまでは事業継続性の視点から議論されてきた。ビジネスの継続的な遂行を妨げるリスクに対して事前準備的に対策を講ずるとともに、事後的な対応策を迅速に実行することが、その課題であった。しかし、リモートワークは、これに新たな視点を加えたとも考えられる 。リモートワークで自宅がオフィスとして活用することが日常化されれば、自宅もオフィスと同じように対応しなければならない。ところが、そこは従業員個人の所有物である。企業の権限が及ばないところである。かといって、従業員が災害に遭遇しても安心して働き、効率的に仕事を遂行するためには、何かしらの対策を打たなければならない。難しいリスクマネジメントが求められる。企業として、効果的なリスクマネジメントに関するノウハウの蓄積に向けて動き出さなければならない。

従業員が自然災害からの被害を受けたとき、家屋やその他の財産の復旧には、それ相応の時間と費用が掛かってくる。このことは従業員がたとえ仕事をしたいと願っても、それを妨げることになる。こうした困難な状況からの脱出を支援することが必要となる。