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唐突だが読者の皆様は「オペレーショナル・レジリエンス」という用語をご存じだろうか?金融業界には比較的ご存じの方が多いかもしれないが、一般にはまだまだ認知が進んでいない用語なのではないかと思われる。

バーゼル銀行監督委員会(BCBS)が2021年3月に発表した「オペレーショナル・レジリエンスのための諸原則」(注1)では、オペレーショナル・レジリエンスは「the ability of a bank to deliver critical operations through disruption」すなわち(災害や事故などで)混乱した状況においても、銀行が不可欠な業務を顧客に対して提供できる能力だと定義されている。さらに、この定義とあわせて次の7つの原則が示されており、これらに取り組む仕組みを備えることが銀行業に期待されている。

・Governance (ガバナンス)
・Operational risk management (オペレーショナル・リスクマネジメント)
・Business continuity planning and testing (事業継続計画とテスト)
・Mapping interconnections and interdependencies (相互関連性と相互依存性のマッピング)
・Third-party dependency management (サードバーティへの依存性の管理)
・Incident management (インシデント管理)
・ICT including cyber security (サイバーセキュリティを含む ICT)


オペレーショナル・レジリエンスに関する議論は2018年に英国で始まったようであるが、その後は欧米を中心に急速に議論が進み、各国にて規制の整備が進みつつある(注2)

前置きが若干長くなったが、BCMの専門家や実務者による非営利団体であるBCI(注3)が、この「オペレーショナル・レジリエンス」がどのように認識され、取り組まれているかを調査し、その結果を「Operational Resilience Report 2022」として2022年6月に発表したので、本稿ではこれを紹介する。

なお本報告書は下記URLにアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、無償でダウンロードできる。
https://www.thebci.org/resource/bci-operational-resilience-report-2022.html
(PDF 72ページ/約 7.2 MB)


前述のように、オペレーショナル・レジリエンスは銀行業を中心に取り組みが進められているものであるが、BCIは調査対象をあえて銀行業に限定せず、BCIの会員を中心に幅広くさまざまな業界の関係者を対象としてアンケート調査を実施している。回答者の内訳を見ると、業種別では銀行や金融業からの回答が25.4%、政府や公的機関が12.2%、保険業が11.9%などとなっている。地域別では欧州からの回答が47.8%、北米からが20.6%、オーストラリア・ニュージーランドからが10.7%となっており、アジアからの回答は6.6%である。

本報告書で最初に示されているデータは、「あなたの組織にはオペレーショナル・レジリエンスに関するプログラムやプロジェクトがありますか?」という設問に対する回答結果であるが、実に65.1%が「Yes」と回答している。これにはさすがに筆者も「欧米では銀行業以外でもこんなに進んでいるのか?」と驚いたが、これには誤解が若干含まれているようである。

報告書本文によると、他の設問に対する回答状況から、回答者の多くがオペレーショナル・レジリエンスと「組織のレジリエンス」(organizational resilience)や事業継続マネジメントとを混同している可能性が高いという。つまり回答者の大部分を占める欧米においても、オペレーショナル・レジリエンスという概念がまだ十分理解されていないということであろう。