改正民法の施行により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これにより、2022年4月1日からは、満18歳以上であれば、携帯電話の購入契約やアパートの賃貸借契約、クレジットカードの作成なども親の同意を得ることなく行うことができます。その一方で、喫煙、飲酒、競馬・競輪などの公営ギャンブルについては、これまで通り年齢制限が20歳に維持され、国民年金への加入義務が生じるのも20歳からです。では、成人年齢の引き下げは、労働契約の締結にどのような影響を及ぼすのでしょうか。今回は未成年者雇用の留意点について解説します。

1 労働基準法による未成年者の定義

労働基準法上、未成年者については、児童、年少者、未成年者の3つの区分が定められています。

① 児童
児童とは、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者、つまり義務教育が修了するまでの者を指します。児童は、原則、労働者として使用することができません。ただし、映画の作成や映像の事業など一部の事業について、一定の要件を満たす範囲内で児童を使用することは認められています。

② 年少者
年少者とは、満18歳に満たない者のことを指します。年少者は、労働基準法により特別の保護を受けます。そのため、使用者は、年少者を雇用する場合、その年少者の年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければなりません。

③ 未成年者
未成年者とは、成年に達していない者のことを指します。民法の改正により成人年齢が満18歳に引き下げられたことにより、2022年4月以降においては、未成年者と年少者が同じ意味をもつことになります。

2 成人年齢引き下げによる影響

労働契約は、本人が自ら締結しなければなりません。未成年者であっても親権者や後見人が代わりに締結することはできません。また、労働基準法では、満18歳以上の労働者については特別な保護を与えていないことから、成人年齢が満18際に引き下げられたことによる労働契約への影響は、基本的にはありません。ただし、未成年取消権がなくなることについて留意する必要があります。

民法では「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」(第5条)と定めており、法定代理人の同意を得ずに締結した契約は、取り消すことができます。未成年者取消権は、本人だけでなく法定代理人も行使でき、未成年者である子が不利な労働条件で働かされている場合、親は子が使用者との間で締結した労働契約を取り消すことができます。これまでは、満20歳になるまでは未成年取消権を行使することができましたが、成人年齢の引き下げにより、満18歳になると未成年取消権を行使することができなくなりました(ただし、2022年4月1日より前に18歳、19歳の者が親の同意を得ずに締結した契約は施行後も引き続き取り消し可能)。

期間の定めのある契約であれば、労働者は2週間前に予告をすることで解約することができますが、期間の定めのある有期労働契約は、契約期間の終了まで使用者及び労働者を拘束するため、原則として、中途解約することはできません(ただし、労働者は、1年を経過した後はいつでも中途解約することが可能)。

特に大学生になって初めてアルバイトとして労働契約を締結する場合は、労働条件を予めしっかり確認をして、不本意な労働契約に縛られないように注意することが大事です。