巨大災害のカウントダウンに際して何をすべきか考える(写真:写真AC)

複数の地震学者が、2035年±5年に、西日本を中心に大きな被害をもたらすと公言している南海トラフ地震。名古屋沖の東南海地震を皮切りに、高知沖の南海地震、静岡沖の東海地震と短期間に3連動で発生し、さらにその前後に首都直下地震や富士山噴火がつながっていると聞くと、内閣府がいう「今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率80%」の深刻味が増すとともに、未曾有の5連動災害ととらえることもでき、企業BCPとして過去の震災経験が役に立たないかもしれないという思いを強くします。

2020年代に首都直下地震、2030年代に南海トラフ地震、その後に富士山噴火という流れ(シナリオ)があると想定した場合、私たちは、また企業は、そのカウントダウンに際し何をすべきか。最短あと8年。逆算による備えと回避策が求められるのはいうまでもありません。

南海トラフ地震と大阪、富士山噴火と東京(次回)にそれぞれ焦点をあて、逆算による企業に求められる対策を考えてみたいと思います。

大阪から見た南海トラフ巨大地震のシナリオ

まず2030年代の南海トラフ地震。ここでは最短の2030年に名古屋沖の東南海地震が発生すると仮定します。時をおかず高知沖の南海地震、続いて静岡沖の東海地震、この3連動が発生します。

公共交通機関が停止(写真:写真AC)

大阪から見た、最初の名古屋沖。大阪都心部では最大震度5強から6弱と想定されます。都市部における津波の被害はほとんどないものの、バス以外のJR、地下鉄、私鉄といった公共交通機関は24時間ほど全停止。ライフラインでは、局所的なものは除き停電はありませんが、ガス、水道の短期停止はありそうです。

平日就労時間帯に地震が発生すれば、帰宅困難者が多数発生します。液状化は至る所で発生し、道路交通にも支障をきたします。救援物資や食品、日用品などの物資の輸送にも大きな影響があります。直後、東海圏と近畿圏だけに限らず、全国でほとんどの食品、日用品がスーパーから消え、大阪で再入荷するのは1カ月後…。

停電や断水も発生(写真:写真AC)

しかし、復旧を急いでいる間に次の高知沖が発生してしまいます。大阪都心の最大震度は6強、河川を遡上し津波5 メートルが大都市大阪に到達します。この段階のライフラインは、揺れと津波により、停電、断水、ガスの供給停止、液状化と土砂崩れによる道路交通の影響も甚大。携帯電話の基地局も被災し、当然公共交通機関は全停止で、復旧まで最短2日。大きな被害が大阪に降り掛かります。

最初の名古屋沖から数日後だと仮定すると、復旧に取り掛かったと思えた直後に、さらに大きな揺れと津波が襲うわけです。またその数日後、3連動の最後、東海地震が発生します。

この段階で道路交通や鉄道はすべて東西分断され、物流は日本海側ルートを選択せざるを得ません。大阪よりも被害が深刻なのは四国。本州との接続橋は全て運行停止が続き、半年程度影響が続きます。四国に工場を持つ企業は、工場被災と同時に復旧にも大きな時間が掛かります。