(出典: Shutterstock)

今回紹介させていただくのは、米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology:NIST)、ジョンズ・ホプキンス大学、ノースダコタ州立大学、米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration:NOAA)、メリーランド大学カレッジパーク校の研究者が共同で発表した論文である。(注1)

タイトルにある「historically underrepresented group」は「歴史的に過小評価されたグループ」という意味になるが、英語圏では少数民族や性的マイノリティなど、差別的な扱いを受けている対象に対して広く用いられている用語である。本論文では白人以外の人種や女性、退役軍人によって経営されている企業が「HUGO」(historically underrepresented groups operated)と総称されている(注2)。一般的に、特に小規模なHUGO企業は社会的に脆弱であると考えられており、本論文では新型コロナウイルスによるパンデミックや自然災害から、社会的な脆弱性を抱える企業がどのような影響を受けたかを調べるために、中小企業を対象としたアンケート調査を実施した上で、HUGO企業とそうでない企業との間で調査結果の比較が行われている。

なお本論文クリエイティブ・コモンズ4.0国際ライセンスで公開されており、下記URLから無償でダウンロードできる(注3)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2212420922000644
(PDF 13 ページ/約 2.2 MB)


本論文は、米国において1960年以降に1回以上の自然災害を経験した州にある、従業員数500人以下の企業を対象としたアンケート調査に基づいている。図1は全回答1370件の内訳を示したもので、調査対象のうち22%がパンデミックの間に自然災害の影響を受けたと回答している。また回答者のうち約3割がHUGO、5割弱が非HUGOであったことが示されている。

画像を拡大 図1. 回答された企業の内訳 (出典:Helgeson 他 / Natural hazards compound COVID-19 impacts on small businesses disproportionately for historically underrepresented group operators)

本論文には統計解析のプロセスや有効性を示す説明や数式などが記載されているが、本稿はナナメ読みなのでこれらに関する説明は省略し、結果の要点をピックアップして紹介させていただく。