在宅勤務はメンタルヘルスだけでなく、身体面への影響も(写真:写真AC)

1.はじめに

前回は、在宅勤務によるメンタルヘルスへの影響について考えるとともに、企業はどのように対応するべきか検討しました。

企業の人事・総務部などに所属する担当者を対象としたアンケート(2020年6月16日~29日、複数回答可)では「従業員の健康にについて認識している課題」として「メンタルヘルス」が80%、そして「運動不足」が77%となっていることから、メンタルヘルスだけではなく、運動不足という身体面への影響があることも明らかになっています(「健康経営の推進について」〈令和3年10月、経済産業省ヘルスケア産業課〉)。

今回は、新型コロナウイルス感染症の流行における従業員の健康問題のうち、身体面への影響を考えます。

2.身体面への影響の原因

「経営環境の推進について」では、在宅勤務を中心とするテレワークによって感じる不調として、肩こり(68.1%)、精神的な不調(61.3%)、腰痛(54.6%)、姿勢が悪くなる(52.7%)、そして目の疲れ(50.5%)などが上位にあがっています(複数回答可)。

精神的な不調には、さまざまな内容が考えられますが、回答者の6割以上が感じていることから、肩こり、腰痛や目の疲れなど、その他の身体的不調とも関係していることが伺えます。

(1)在宅勤務をする際に使う机や椅子が自分の身体に合っていない

椅子や机が合っていないと肩こりや腰痛の原因に(写真:写真AC)

在宅勤務では、長時間座って仕事をしますから、その間、正しい姿勢を保つためには、自分の身体に合った机や椅子を使う必要があります。特に、机の天板の高さと、椅子の座面までの高さが自分の身体に合っていないと、肩こりや腰痛になりがちです。

会社の椅子は通常、その座面の高さを調整できますが、自宅の椅子には調整機能がないものも多く、不自然な姿勢を強いられたままということが起こり得ます。

(2)適切な照度が確保されていない

机の作業には照度基準がある(写真:写真AC)

労働安全衛生規則では、従業員が仕事をする場所の作業面、つまり机の上の照度基準が決められていますが、特にパソコンを使う業務に関する環境については「VDT(注1)作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日、厚生労働省労働基準局長)において、次のようなことを推奨しています。

・室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること

・ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下とすること

・書類上およびキーボード上における照度は300ルクス以上とすること

・ディスプレイ画面の明るさ、書類およびキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること

・ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること

・反射防止型ディスプレイを用いること など

しかし、自宅では、このような適切な照度基準が満たされているとは限りませんので、これが目の疲れの原因となり兼ねません。

(注1)「VDT」Visual Display Terminals(情報機器類、具体的にはディスプレイ、キーボード等により構成されるコンピュータの出力装置の一つで、文字や図形、グラフィック、動画などを表示するものを指す)