健康経営は健康管理を経営的視点から考えること(写真:写真AC)

健康経営は、企業が従業員の健康管理に投資することによって、そのパフォーマンスが向上し、結果として企業の業績やイメージもよくなるという好循環が起きるという考え方です。これまで健康経営について、在宅勤務を中心とするテレワークや、職場で増えている高年齢労働者などさまざまな観点から考えてきましたが、最終回となる今回は企業として押さえておくべきポイントを整理します。

1.社会の環境変化に的確に対応する

新型コロナウイルス感染症の流行の結果、企業は働き方の変化を求められました。具体的には、感染リスクから従業員を守るために多くの企業が導入した在宅勤務が、この働き方の変化に該当します。社会の環境変化に「的確に対応する」ということは、単に感染予防対策として在宅勤務を導入すればよい、ということではありません。

(1)コンプライアンス違反はないか

的確に対応するということは、在宅勤務という新たな制度を導入するにあたって最低限、コンプライアンス違反がないように準備することが求められます。

例えば、労働時間が長くならないように労務管理体制を整備することが必要です。また、通信費などオフィス以外で業務を行う場合に発生する費用を誰が負担するかなどの規程も就業規則に盛り込む必要があります。

適切な労務管理が必要(写真:写真AC)

あわせて、情報漏えいが起こらないような情報管理体制も求められます。在宅勤務で使うパソコンのセキュリティについては、「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」(総務省、2021年5月31日)などを踏まえて漏えい対策を講じるとよいでしょう。

(2)導入の結果、デメリットは生じていないか

多くの企業は、感染リスクの低減を目的として在宅勤務を取り入れましたが、実際には感染リスク低減以外の効果、つまり通勤・顧客訪問などの移動時間がなくなり労働効率がアップするなどの副次的な効果もみられました。

しかし、その一方で、在宅勤務中のコミュニケーション不足によるメンタルヘルスの悪化や、運動不足による健康状態の悪化のように、健康経営の観点からはそのままにはできない課題も見えてきました。

新たな制度はデメリットも確認(写真:写真AC)

企業が新たな制度や仕組みを導入し、目指していた結果が得られた場合でも、その制度などを取り入れたことによって何かデメリットが生じていないかを確認するとともに、もしデメリットがあればそれをなくす対策を講じることが求められます。