ビジネスに最新のテクノロジーを活用することは、今や常識である。そうした動きは、金融業界ではファイナンシャル・テクノロジー、略してフィンテックと呼ばれる。同様に、保険業界ではインシュランス・テクノロジー、インシュアテックといわれる。リスク管理ではリスク・テクノロジー、リスクテックである。リスク管理の領域でもリスクを予防したり、軽減したりするために最新のテクノジーを活用する動きは活発である。こうした状況に対応して、リスクテックでの2022年の注目すべき動向として、4つのポイントが指摘されている 。

リスクテックの台頭

トレンドの1つ目はインシュアテックの動きが一段落の様相を示し、それに代わってリスクテックが大きな位置を占めるようになるというものである。インシュアテックは、その名が示す通り保険の販売、引受、保険金請求などにおける業務の効率化や顧客満足の向上に向けて急速に発展してきた。多くの保険関連サービスに新たなテクノロジーが導入されてきたことから、そこでのイノベーションは鈍化しつつあるという。これを受けて、保険関連業務を超えて、保険の対象そのものであるリスクの予防、軽減に向けてテクノロジーを導入しようとの動きが活発化してくると考えられる。しかも、こうした動きは結果的に保険金請求を減少させることにつながるため、保険料や免責金額を下げることにもなり、保険会社と保険契約者の双方にとってプラスの影響を及ぼすと期待される。

リスクテック企業との連携

二つ目は、こうした動きを促進させるために保険会社がリスクテック企業との連携を強化し、場合によってはそうした企業を買収することも起きてくることである。リスクを低減するテクノロジーやそれを活用するサービスに対する需要は確実に増加している。そのためリスクテック企業はそうしたニーズに応えて多くの商品・サービスを開発している。例えば水回りに関するリスクに対しては、センサーによってリアルタイムで予防が可能となるし、ウエラブル装置はリアルタイムで体のリスクを察知して知らせてくれる。リスクの予防、軽減が可能となり、保険会社も被保険者も恩恵を受ける。これらのテクノロジー開発はまだまだ余地を残しているし、導入競争も激しい。保険会社がそのメリットを享受しようと、リスクテック企業との連携を強化する動きに出ることは、容易に想像できる。