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私は企業内部に入り、エンタープライズ・リスクコミュニケーションに伴う組織構築を行って7年以上になります。ベンチャーから大企業まで多くのクライアントから聞く共通の言葉は、「うちの組織は縦割りなんです」というものがあります。今回は、多くの企業が抱える共通の問題の一つであるこの縦割り組織(セクショナリズム)のリスクココミュニケーション上の弊害とその解決策について述べたいと思います。

縦割り組織(セクショナリズム)とはどういうことでしょうか。リスクコミュニケーションを行うためには組織横断型のワンチームで取り組む必要があります。それは失敗する要因として、組織間の連携不全が問題を引き起こすことが圧倒的に多いからです。

セクショナリズムや縦割り組織とは、「経営本部」や「広報」「営業」といった組織の個別独立性が強く、お互いの組織間で協力体制が希薄な状態を言います。

具体的な事例を挙げましょう。私がかつて支援した飲食業グループの経営するレストランで食中毒が発生しました。しかし、顧客対応の担当者はすぐに事実関係を経営本部と共有しようとしませんでした。彼女は顧客のクレーム対応に自信があり、被害に遭った顧客の対応が全てうまくいけば経営本部には事後報告でいいと考えたからです。これにより事実関係を調査することに手間取りましたが、事実が明るみになった後も、経営本部は食中毒になった顧客の数字を矮小化できないかと情報公開をちゅうちょし、なかなか広報に情報公開の許可を出そうとしません。幸いなんとか関係者を説き伏せ、保健所の協力を得ながら詳細な情報公開ができて大事には至りませんでしたが、この時縦割り組織の中でリスクコミュニケーションを行う難しさを痛感しました。

このような隠蔽行為は、リスクコミュニケーションがうまくいかない典型です。誰もがなんとなくおかしいと感じながら誰も声を上げず、明確な組織的な意思決定のないままにいつの間にか手遅れになってしまうのです。結果的に信用が失墜し売上が落ち、組織に打撃を与えることになります。

この場合、迅速に事実関係を確認し、経緯や対応策、再発防止策などの内容を詳細に伝えることでしかレピュテーションリスクを減らすことはできません。

関係するステークホルダーは食中毒になった顧客だけではありません。企業価値を作り出しているのは、顧客、株主、投資家、取引先、従業員、メディアといったさまざまなステークホルダーの企業に対する評価(レピュテーション)です。

レピュテーションが失墜すると結果、株価が下がり、不祥事に厳しい機関投資家が離れます。株価の低迷が長期化し、消費者のイメージが悪化して顧客離れが進み売上が落ちます。取引先の信用も失われます。経営陣に対する信頼感が低下し、働く従業員意欲が失われ生産性も落ちてきます。さらに優秀な学生や人材から就職先として敬遠されていき、負のスパイラルに陥るのです。よってリスクコミュニケーションを行うことは、レピュテーションのリスク対応することであると言っても過言ではありません。

ではレピュテーションのリスク対応の弊害になる、このセクショナリズムに対して私たちは具体的にどのように対応していけばいいでしょうか?