2018/04/17
防災・危機管理ニュース

富士山周辺に位置する山梨県8市町村・静岡県8市町でつくる環富士山火山防災連絡会の堀内茂会長(山梨県富士吉田市長)は16日、内閣府を訪れ、小此木八郎・防災担当大臣と面会。4府省庁と2県への富士山火山防災対策に関する要望書を提出した。内容は避難対策の前提となる噴火口の特定や事前予知のための観測体制強化や、広域避難に必要な施設・道路・砂防構造物の整備に対する予算確保など5点。
同連絡会は富士山周辺の静岡県と山梨県にまたがる地方自治体により2005年4月に設立。2006年に災害時の相互応援協定を締結し、2009年には協定の運用マニュアルを整備するなど、県境を越えて定期的な情報交換や火山防災対策の課題整理を実施している。
今回国に対する要望は以下の5点。(1)高齢者・障害者など避難行動要支援者の避難先確保など支援(2)噴火口等の特定のための情報収集体制強化(3)非常災害発生前段階からの国機関の支援継続(4)大量の降灰に対処する検討組織の設置(5)退避壕等の整備補助の継続・拡充。内閣府以外に気象庁、消防庁、国土交通省の3省庁、また静岡・山梨の両県知事に対しても要望を提出した。気象庁には観測体制の充実と迅速な情報提供の検討、国交省には国直轄による砂防構造施工の整備予算確保、静岡県と山梨県にはそれぞれクラウドコンピューティングなどITを活用して県を越えた自治体間情報共有システムの構築、などを要望した。
堀内会長は、小此木担当相との面談後に行った会見で、国によるこれまでの富士山噴火防災対策について、砂防構造物の整備でこれまでの静岡県側に加え今年度から山梨県側にも国直轄の施工体制が始まったことや、退避壕の整備に今年度から自治体だけでなく民間業者にも補助が適用されることになったことを評価。一方で避難対策の前提となる噴火口特定を急ぐこと、噴火を数週間前に事前察知するための地表温度計・空振計・監視カメラなど観測体制を充実すること、さらに一般火山噴火の数百倍にのぼる大量の降灰処理に対する検討組織の設置が急務であることなどを強調した。
堀内会長は「富士山噴火の被害域は自治体や県をまたいでおり、防災減災の対策は国を主導に実施するのがポイントになる。小此木担当相からは、要望に対してしっかり検討していきたいとの言葉をもらい感謝している」と報告した。
(了)
リスク対策.com:峰田 慎二
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方