最新のデータでは、全世界(72カ国)で176の商用5Gネットワークが展開されています。5Gとは、第5世代移動通信システムの略語です。

Map of operator investments in 5G (mid-Aug 2021)

画像を拡大 (引用:CGA 5G Market Snapshot – 19 August 2021)

本邦ではこの7月、総務省から「ICT サイバーセキュリティ総合対策 2021」(サイバーセキュリティタスクフォース)が公表されました。これは昨年4年越しでまとまった、「IoT・5Gセキュリティ総合対策2020」の改定版です。その前文は、次のように始まります。

デジタル改革やデジタルトランスフォーメーションを通じた Society5.0 の実現に向けて、IoT や 5G をはじめとする ICT の普及が進展しており、さらにサイバー空間があらゆる主体が参画する、いわば公共空間へと進化しつつある中で、サイバーセキュリティリスクへの対策の一層の強化は急務となっている。

この資料でもそうですが、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)による「次期サイバーセキュリティ戦略(案)」においても、すでに「Beyond 5G」や「6G」、あるいは「国際連携」という文字が多出します。

振り返れば今年2月に、ASTANA CLUB(ヨーロッパとアジアで最も評判の高い地政学的フォーラムの一つ)が発表した「Top 10 Risks for Eurasia 2021」に一章を寄稿したISFのSteve Durbinは、「デジタル全体主義」を論じています。そうして論考を次のように閉じています。

国民の個人データの「国有化」と保護を確実にしようとする各国家の試みが成功するかどうかは、その国がデジタル領域で独自の技術的ソリューションや基準を生み出す能力を持っているかどうか、に直接左右されます。実際、ビッグデータ、人工知能、5Gなどの分野における最新の技術開発手段は、デジタル地政学的競争がますます激化する空間において生き残る術として、最も重要なものとなりつつあります。デジタル競争に遅れをとる国は、やがて自国の主権を全うする機会を奪われ、世界的な技術競争における先進国の「デジタルコロニー」と化してしまうでしょう。

たしかに、国家戦略がビジネスや一般消費者のこれからを大きく左右しそうです。ただし、このブログの問題意識としては、国による、先を見据えた戦略や基本構想が矢継ぎ早に出され、めまいのするような大波が次々と押し寄せて来る状況の中、企業としてはどうすればよいのか、という点に尽きます。また、サイバーセキュリティチームやリスク統括部署としては、どういう見通しをもっていればビジネス号を安全に航海させられる「ライフセーバー」たり得るのか、という点に関心があります。

そこで今回は、第5世代移動通信システム(5G)に絞って、いつものように、Steveの見解を求め、最近のエッセイを読み合わせしたいと思います。