突然の災害に備えるためには日ごろの意識と行動改革が大切
第6回:熱海の土石流災害についての考察
国際大学GLOCOM/
主任研究員・准教授、レジリエントシティ研究ラボ代表
櫻井 美穂子
櫻井 美穂子
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。ノルウェーにてヨーロッパ7か国が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」に参画。専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。
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2021年7月3日に発生した熱海市の土石流被害に見舞われた方々に対し、心よりお悔やみ申し上げます。また、今現在も捜索活動に従事していらっしゃる皆さま、ご自身の身の安全にどうか万全の注意を払っていただき、一人でも多くの方が救助されることを願います。災害が起こるたび、「first responder」といわれる初動対応従事者の方々のご活動に頭が下がります。本当にありがとうございます。
研究者としては、起こった事を客観的に俯瞰(ふかん)し、これまでの教訓がなぜ生かされなかったのか、今回の災害から何を学ぶべきかを考えることしかできません。前回までの内容を踏まえつつ、本連載のテーマであるレジリエントとデータ活用の観点から、振り返ってみたいと思います。
「情報伝達」の観点では、土石流発生地域に自治体(熱海市)からの避難指示が出ていなかったことがさまざまなメディアで取り上げられています。土石流発生時点で熱海市が出していたのは警戒レベル3に当たる高齢者等避難です。なお、2021年5月に災害対策基本法が一部改正され、従来の避難勧告は警戒レベル4に当たる避難指示に統一されました。
この連載では、地域の状況や一人一人に合った情報提供により命を守ること、パーソナライズな情報発信の重要性を述べてきました。今回土石流の被害があった地区は、熱海市のハザードマップ上で土砂災害警戒区域に指定されていたこと、土石流発生の前日午後12時30分には気象庁から土砂災害警戒情報が発表されていたことを踏まえると、当該地域に住む住民に対してパーソナライズされた避難情報が提供されていれば、と考えずにはいられません。一方で、自治体からの公式な避難指示が出ていない状況で、避難を「自分ごと」として捉えてほしい、という主張にも無理があるかもしれません(「自分は大丈夫」という正常性バイアスについては第1回をご参照ください)。
近年、豪雨災害は甚大化していますので、一つ一つのケースをしっかりと振り返りながら、日ごろ自分の住む地域の特性を理解して、いざという時にどのような行動をとるべきなのか(マイタイムライン)について議論する機会を少しでも増やすこと(学校単位、会社単位、家族単位で)がますます重要になると思います。
国交省では、親戚や友人の中に災害の危険が迫っている地域にお住まいの方がいる場合、その地域の外に住む人が「逃げて」と連絡する「逃げなきゃコール」の普及に尽力しています(https://www.mlit.go.jp/river/risp/policy/33nigecall.html)。さまざまなアプローチで命を守る行動を後押ししていきたいです。
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