いざというときに備えた日ごろの意識改革
第7回:デジタル活用により近隣住民やコミュニティーのつながりを可視化する
国際大学GLOCOM/
主任研究員・准教授、レジリエントシティ研究ラボ代表
櫻井 美穂子
櫻井 美穂子
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。ノルウェーにてヨーロッパ7か国が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」に参画。専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。
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災害時を含め、行政からのパーソナライズ(個人の好みや状況に応じて最適化)された情報やサービス提供に対する人々のニーズは高いです。アンケート調査(※)で、自分の暮らしの状況に応じたサービス(パーソナライズサービス)があるとよいかについて聞いたところ、「とても良い(26.4%)」「良い(49.0%)」との回答が合わせて75.4%となったのは第4回でご紹介した通りです。パーソナライズサービスのニーズを高くする要因には、近隣住民とのつながりやコミュニティーづくり、助け合いによる充実感であることもご紹介しました。
自分の生活に密着した情報やサービス、災害のように自分や家族の命に直結する切迫した状況に適応した情報の提供には高いニーズがある一方で、望まれる情報やサービスの提供主(本連載においては自治体を念頭においています)にとっては、災害時のリアルタイム情報発信やパーソナライズサービスの提供はハードルの高い取組みでもあります。リアルタイム情報発信に必要な人手が足りない、パーソナライズサービスの提供のために必要な個人情報の取り扱いに関する合意形成の難しさ、具体的には、災害時の避難に支援が必要な方やその支援者の方々と、個人情報の扱いについてどのように協議し合意していくのか、どの自治体でも試行錯誤しながら取り組まれています。
特に本連載でも繰り返し述べている、家族構成や住宅の立地により異なる災害リスクを鑑みた情報の発信は災害発生「前」に行う必要があるため、各自治体が制定する現行の個人情報に関する条例下においては、前回触れた熱海市での行方不明者の個人名開示のような災害発生「後」の対応とは別の話として取り扱われます(別の言い方ですと、災害時に個人の承諾なしに個人情報の利用を可能とする条例は、災害発生後に想定されるリスクを軽減させるための災害前のアクションには適応されない、という解釈を多くの自治体がとっています)。少しずつ前に進むハードルを下げていきたいところです。
この連載で繰り返し述べていますが、災害含め、いざというときの対応には日ごろの意識改革が重要となります。デジタルガバメント実現のためのキーワードである自治体と住民との心理的近さ、近隣住民とのつながりやコミュニティー、助け合いによる充実感――などが、いざという時の対応を考える際にもキーワードになりそうです。
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