一度浸水が始まると甚大な被害につながる高潮(写真:写真AC)

高潮は、海面水位(潮位)が上昇する現象です。台風や発達した低気圧が近づくと、波が高くなり海面水位も上昇します。高潮が発生し、一度浸水が生じると、低地における浸水被害が急速に広まることになります。

過去に発生した高潮では、浸水による溺死や、家屋の損壊・流出、船舶の損傷・衝突など、さまざまな被害が報告されています。最近ですと、近畿地方を中心に暴風や高潮の被害が発生した平成30年の台風21号により、最高潮位が大阪府大阪市で329センチメートル、兵庫県神戸市で 233 センチメートルなど、過去最高の潮位を観測しました。

関西国際空港の滑走路の浸水をはじめとして、航空機や船舶の欠航、鉄道の運休等の交通障害、断水や停電、電話の不通等ライフラインへの被害も発生しました。昭和34年伊勢湾台風では、伊勢湾周辺地域、とりわけ湾奥部の名古屋市を中心とする臨海低平地を中心に死者・行方不明者5098人、全壊または半壊した住家が15万戸以上と甚大な被害が発生しました。

今回は、出水期のスタートに、今一度高潮について見ていきます。

1.高潮で危険な場所

次のようなところでは、特に高潮に気を付ける必要があります。ハザードマップの確認が大切ですが、ハザードマップで危険と記載されていなくても、避難意識を持っておくことが重要です。

●海岸付近の低地

海面は満潮時に高くなります。満潮時の高さよりも標高が低いところでは、堤防が決壊すると水が流れてきて浸水被害を受ける恐れがあります。このような場所に住んでいる人は、日ごろから避難ルートを考えておく必要があります。

●湾奥部や河口部

湾の長さが長く、湾の水深が浅いほど、湾や河口部の奥まで風などによって運ばれてきた海水が吹き寄せられて、海水面が大きく上昇します。また湾では、吹き寄せてきた海水がその反動で湾の反対側へと押し寄せることがあるので注意が必要です。

●遠浅な海底地形

強風が海岸に向かって吹き続けると、海岸へ押し寄せる海水の量が多くなります。湾状ではなく直線的な海岸であっても、遠浅な海底地形であれば海水の戻りが妨げられ、吹き寄せの量が大きくなるので高い高潮が発生します。

●V字谷

急に奥が狭まっている地形では、押し寄せた波が1カ所に集中し、一気に波が高くなります。そのため、急に波が迫ってくることがあるので、一層の注意が必要です。