九州北部豪雨の惨状と水資源機構の対応

九州北部豪雨における水資源機構の果敢な現地対応を映像を中心に紹介する。提供いただいた資料は正確かつ真に迫ったものであり、同機構の了解を得て原文のまま掲載する。貴重な資料提供にご理解いただいた同機構に感謝したい(年月はすべて2017年である)。

 
 
 
 

対象の中小河川、438河川

「中小河川緊急治水対策プロジェクト」対象の総延長は438河川、33km。河道掘削と新たな堤防整備で河川の断面を広げて、流下能力を向上させ、家屋や重要施設(市役所、病院、老人ホームなど)への浸水被害を防ぐ(長野県内では5河川の1.2km)。

避難状況の判断や河川計画の策定に必要な水位計は、4992河川、5755カ所に設置する。洪水の水位観測に特化した小型・低コストの「危機管理型水位計」を採用することで、従来型の水位計と比べ、1台につきの設置コストを10分の1以下に削減できるという。(長野県内では126河川の300カ所)。
                 
国交省が重視する透過型砂防堰堤は、平常時の無害な土砂は下流に流し、
土石流などの有害な巨礫や流木が下流に流れることを防ぐことができる。既に一部の山岳地域では導入され効果を挙げている。(下図、参考)。

写真を拡大 提供:国土交通省

林野庁の緊急治山対策

林野庁は、九州北部豪雨で発生した流木被害を教訓に「流木被害防止緊急治山対策プロジェクト」を実施する。土砂や山腹が崩壊する危険性が高い約18万地区を点検した結果、全国1203地区で治山ダムの設置や流木化する危険性のある立木の伐採などを行うことを決めた。今後3年で、事業費600億円を投じる。

局地的な豪雨が増加傾向にある中、九州北部豪雨で発生した土砂・流木による被害と同様の災害が全国で発生する恐れがある。林野庁は、国土交通省が事業費3700億円で実施する「中小河川緊急治水対策プロジェクト」と連携して、流木発生の危険性の高い1203地区で対策を実施する。

対策では、森林の山地災害防止機能の向上を図ることを基本とし、下流域での流木被害の防止・軽減を図る。具体的には、流木補足式の治山ダムの設置や、立木の伐採で下流域の流木被害を抑制する。山腹崩壊を防ぐため、保安林の適正な配置、間伐による根系の発達の促進、土留工による表面浸食の防止も行う。

都道府県別の対策地区数を見ると、長野県が110地区で最も多く、北海道の69地区、山梨県の61地区、愛媛県と高知県の57地区などとなっている。

社会人の<建設リカレント教育>に注目

話頭を転じる。治水・治山対策とは直接関係はないが、国土交通省の注目すべき新たな人材育成政策を紹介しておきたい。

国土交通省は、社会人になってから技術・技能を学び直す「建設リカレント教育」の普及に乗り出す。(リカレントとは再教育、再訓練の意)。技術者・技能者に生涯学習の機会を提供して技術・技能水準を高めてもらい、中小建設業の生産性向上につなげる。2017年度補正予算に必要経費を計上し、研修プログラムを作成する教育訓練機関などを支援する。映像やVR(仮想現実)を活用して遠隔地でも研修が受けられる環境を整える。

政府は、人づくり革命の柱として、現役世代のキャリアアップを促すリカレント教育に対する支援を抜本的に拡充する。国交省は、生産性向上が求められている建設分野でも、ICT(情報通信技術)などの技術革新に対応した人材育成をする建設リカレント教育を推進する。

ターゲットとなるのは、中小建設業の生産性向上を支える技能者・技術者である。技能者向けには、教育訓練機関などに研修プログラムを作成してもらい、VRや映像を使って都市部・地方部を問わず効率的に研修が受けられるようにする。技術者向けの研修プログラムを作成し、遠隔地で研修が受けられる環境を整える。

参考文献:国土交通省公表資料、水資源機構公表資料、「新建新聞」、「朝日新聞」関連記事。

(つづく)