2015年茨城県常総市水害の様子

近年、豪雨に襲われると、必ずと言っていいほど中小河川が氾濫・決壊する。災害列島・日本は、今や大河川はもとよりだが、中小河川や渓流の治水対策(河川整備)に本腰を入れる時期を迎えている。中小河川は都道府県の管理の場合が大半であり、治水対策が国よりも遅れがちであった。

国土交通省は2017年12月、政府の2017年度補正予算案に盛り込む主要事業を公表した。この中で、自然災害リスクが高い地域での緊急防災・減災対策を推進するとして、九州北部豪雨を踏まえた中小河川の緊急治水対策に予算を措置する方針を示した。中小建設企業の生産性を高めるため、新規入職人材の育成、中堅人材の技術水準の向上、ITC施工の促進などを支援する。(以下国土交通省公表資料、「新建新聞」2017年12月15日付記事、「朝日新聞」関連記事などを参考にする)。

国交省は補正予算の中で、九州北部豪雨などで被害を受けた公共土木施設の災害復旧と共に、自然災害リスクが高い地域の防災・減災対策に予算を計上している。同省は2017年11月30日、九州北部豪雨を教訓に行った緊急点検の結果を踏まえ、今後3年で全国の中小河川整備に3700億円を投じる「中小河川緊急治水対策プロジェクト」を実施すると発表した。補正予算案には、都道府県の防災・減災対策を総合的に支援する「防災・安全交付金」の予算を追加し、初年度分の事業費を補正予算で手当てする。都道府県の治水対策とともに、直轄の河川・道路・港湾・空港・国営公園の防災・減災にも予算を配分する。

「中小河川緊急治水対策プロジェクト」では、九州北部豪雨の被害を教訓に行った緊急点検の結果を踏まえて、全国の中小河川で、透過型砂防堰堤の整備に約1300億円、河道掘削・堤防整備に約2300億円、危機管理型水位計の設置に約110億円を投じる。初年度分の事業費は、2017年度補正予算案に計上された。

2017年7月の九州北部豪雨での被害を受けて9~11月に2万の中小河川(主に都道府県が管理)を対象に緊急点検を行い、優先箇所を抽出した。2017~20年度の事業費は約3700億円であることは既に記したが、林野庁が実施する治山事業を含めると、総額約4300億円に上る。まず、2017年度補正予算で防災・安全交付金を追加し、都道府県が実施する対策を予算面で支援する。

九州北部豪雨では、大量の土砂・流木の発生が河川の被害を拡大させており、全国の中小河川で土砂・流木の補足効果の高い透過型砂防堰堤(えんてい)を整備する。過去に、土砂・流木の被害を受けた約521河川、745カ所で、透過型砂防堰堤の新設、既設の砂防堰堤の改良、流木補足工の新設などの対策を講じる(例えば長野県では33河川で52カ所)。越水などで度重なる浸水被害が発生した中小河川では、再度の氾濫を防止する河道掘削と堤防整備を行う。