(出典:shutterstock)

BCMの専門家や実務者による非営利団体であるBCI(注1)は、毎年恒例となっている「Horizon Scan Report」の2021年版を2021年3月に公開した。

Horizon Scanとは、中長期的に将来起こり得る変化や事象を、系統的な調査によって探し出そうとする手法である(注2)。BCIでは2011年から、主にBCI会員を対象として「Horizon Scan Survey」というアンケート調査を毎年実施しており、その結果をまとめた「Horizon Scan Report」を公開している。本稿で紹介させていただくのは、その2021年版である(注3)。調査は英国規格協会(BSI)と共同で実施されているので、たまたまではあるが2週連続で、BSIが関与した調査を紹介させていただくこととなった。

なお本報告書は下記URLにアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、無償でダウンロードできる。
https://www.thebci.org/resource/bci-horizon-scan-report-2021.html
(PDF 72ページ/約5.7MB)

なお毎度のことであるが、本報告書の回答者の分布は、42.2%は欧州、31.2%が南北アメリカ、11.2%がアジア、などとなっていいるので、報告書全体を通して欧州の状況が色濃く反映されているという前提で読む必要がある。

本報告書に関する調査は2020年12月に行われているため、当然ながら今回の報告書には新型コロナウイルスの影響が色濃く反映されている。図1は本調査の回答者が、過去12カ月間に影響を受けたリスクや脅威の評価結果で、縦軸に影響の大きさ(Impact)、横軸に発生頻度(Frequency)をとって評価結果を示したものである。文字が小さくて分かりにくいと思われるが、今回のパンデミックによって「Non-occupational disease」(業務上でない疾病)という項目が、図の上の方に突出して現れる結果となった。

画像を拡大 図1.  過去12カ月間に影響を受けたリスクや脅威の評価結果(出典:BCI / Horizon Scan Report 2021)

前回調査時の評価結果が本連載の第92回(https://www.risktaisaku.com/articles/-/25826)に掲載されているので、見比べていただければ今回の評価結果の異常さが一目瞭然である。前回まではこのグラフの縦軸の最大値は2.4であったが、パンデミックの影響によってグラフ全体が縦方向に引き伸ばされ、結果的に4つの象限(黄、オレンジ、赤の色分け)の境界線も上方向にシフトさせられた格好となっている。今回のパンデミックの影響がいかに大きかったかを、改めて印象付けられるデータである。

図1はこれまでに影響を受けたリスクや脅威に関するグラフであるが、同じようなフォーマットで、今後12カ月間に顕在化することが懸念されるリスクと脅威の評価結果も示されている。これに関してはぜひ報告書をダウンロードしてご確認いただきたいと思うが、こちらでも「Non-occupational disease」が依然として上の方にプロットされているので、調査に回答した方々の多くが、今年もパンデミックの影響が当分続くと考えているのであろう。