2016/09/11
事例から学ぶ
東日本大震災の余震が続く2011年3月15日、静岡県東部を震度6強の地震が襲った。同県富士市に本社を構える自動車部品メーカーのジヤトコ(JATCO)は、工場などに深刻な被害を受けた。同社は自動車用変速機(CVT)において世界シェアトップの約50%を製造する。現在、同社では震災の教訓からBCM(事業継続マネジメント)を強化するとともに、自衛消防組織を活用し、災害に備えた訓練を繰り返し実施している。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年3月25日号(Vol.48)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年9月11日)
JATCOは、1996年6月に日産自動車のAT・CVT(オートマチック車用自動変速機)部門が分社化してトランステクノロジー社となり、99年10月にジャトコ(旧日本自動変速機株式会社)と合併して誕生した。当時の日産自動車の社長は就任したてのカルロス・ゴーン氏。2003年には三菱自動車工業のAT・CVT部門と合併し、現在のJATCOが誕生。同時に、部品の供給責任も強まったことから、地震対策を中心とした取り組みを本格的にスタートさせた。
同社工務部工務課の佐藤勇一氏は「2003年当時、東海地震の発生が危惧され始めたこともあり、地震対策部が発足。2007年にかけて建屋・設備の耐震対策を施すとともに、マニュアルの整備を開始した」と話す。
自衛消防隊の位置づけ
同社の自衛消防組織は、BCM本部において災害時の初期対応(避難、救助、安否確認、二次災害防止など)を担当する組織として位置付けられている。自衛消防組織は、工場や地区ごとに、工場長、副工場長らが地区本部長、副地区本部長を務める地区防災本部と、職場防災隊に分かれている(表1)。
職場防災隊は、各職場で実際に災害対応にあたる実動部隊で「通報連絡班」「避難誘導班」「消火班」「救護班」「工作班」「搬出班」で構成される。一方の地区防災本部は、通報連絡班統括者、避難誘導統括者など、職場ごとに設置されたそれぞれの班の統括者が配置される。統括者に任命された従業員は、2日間の「自衛消防組織新規業務講習」の受講が義務付けられる。それぞれ発災時だけでなく、警戒宣言が発せられた場合にも、任務が発生するのが特徴だ。
静岡県富士市には、同社の工場が第一地区から第四地区まで設けられている。今回取材した第一地区には協力会社も含め1500人ほどの従業員が働いており、職場防災隊の1つの班には2人~5人が所属し、合計33班が設置されている。従業員の約半数にあたる700人が何らかの形で自衛消防組織に属しているという。
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