2015/01/25
事例から学ぶ
緊急地震速報のチャイム音に続き、「5秒以内に大きな揺れが来ます」とのアナウンスが日本語と英語で館内に放送される。

8月29日、港区にある東京ミッドタウンで行われたヤフーの震災対策訓練は、一般的な防災訓練と同様、震災時の初動対応から始まった。違う点があるとすれ ば、外資系企業が多く入居するため英語でもアナウンスが流れることぐらいだ。しかし、次第に室内には、緊迫したムードが漂っていく。社長(CEO)の宮坂 学氏や最高執行責任者(COO)の川邊健太郎氏が次々と災害対策本部に集結。経営層の本気度が社員に伝わっている。
被害想定は、東京湾でマグニチュード7.3の地震が発生し、ヤフー本社のある港区も震度6強の揺れを観測したというもの。
役員および全社員には、訓練をやるということは伝えてあるが、その他の細かなシナリオは一切伝えていない。
「停電により電源が落ちました。自家発電装置が稼働しています」
事務局から情報が付与される。
「非常用電源の状況はどうなっている」と即座に役員の一人が事務局に質問する。
「サーバー室とボードルームだけが48時間、電気を使えます。あとのフロアは共用部と最低限の防火・防災設備だけしか稼働しません」
Wi-Fiも使えない。
役員:「サービスはどうなっているんだ」
事務局:「現在確認中ですが、西日本は問題なく動いていますが、東京の状況が確認できません」
しばらく沈黙が続くと、事務局が「都内では各地で負傷者が発生しているようです。電車、地下鉄はすべて運転を見合わせています。羽田、成田空港の全便もストップしています」との新たな情報を付与する。
しばらくの沈黙の後、「外に出ている社員の安全は確認できているか」と宮坂社長が声を張り上げる。

事務局:「安否確認システムを発動していますが、現在集計中です」
宮坂社長:「フロアごとの安否は」
事務局:「現在、防災担当者が確認中です」
六本木ミッドタウンの8階から20階と35階には、ヤフーの全5000人の社員のうち、4000人ほどが働いている。
計画上は、各フロアの防災担当者が、それぞれのフロアの状況を、対策本部室に報告することになっている。宮坂社長は、フロアごとの安否状況が貼り出さている壁に歩み寄り「何も書かれていないフロアはどうなっているんだ」と事務局に問いかけた。
「連絡がとれていないか、担当者が不在か…」事務局が声を詰まらせると、すかさず「誰か行くなり確認しなくていいのか」と指示を飛ばした。
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