2015/01/25
事例から学ぶ
Googleのホームページに飛ばすアイデアも
厳しい残暑が続く8月の末、ヤフー本社が入居する港区の東京ミッドタウンでは、大規模な実働訓練が行われた。首都直下地震により東京全体が大きな被害に見舞われ、ミッドタウンでも震度6強の揺れにより事業の継続が困難な状況に陥ったとの想定で、被災者の救出、被害状況の確認、そして主要事業であるYahoo!Japanトップページの運営を北九州の支社で継続させるというもの。訓練は、代表取締役社長(CEO)、最高執行責任者(COO)をはじめ、全社員のうち9割が参加する規模で行われた。

2011年の東日本大震災では、ヤフー本社が入居する東京ミッドタウンも大きく揺れ、窓ガラスにひびが入ったり、本棚が倒れ、さらにボヤ騒ぎまでが起き、全社員が隣接する檜町公園に一時的に避難することを余儀なくされた。そんな中でも、当時の井上雅博社長のもと、社員はノートパソコンやスマートフォンにより、ヤフーのトップページで震災関連ニュースを流し続けた。

震災翌日には、震災対策特別室を設置し、ページビューの増加や新しいニーズに24時間対応できる体制を整え、災害基金も立ち上げた。さらに、計画停電における地域情報や、電力の逼迫状況、放射線情報といった東日本大震災以前には想像できなかった新しいニーズが相次いで発生したことから、東京電力の発表を分かりやすくまとめたページや計画停電マップなどを急きょ開発した。震災から3日目の3月14日時点で、同社の閲覧数は、当時、過去最高の23億6500万ページビューを記録している。
こうした背景もあり、同社では、災害時でも「Yahoo!JAPANトップページはどんなことがあっても落とさない」ということを最重要課題に据えている。
具体的な対策としては、平時からサーバー、回線を冗長化するとともに、万が一の被災時には、東京が被災したら九州でオペレートを行える計画を整えている。その本気度を示すかのように、社内では「最悪のケースの場合は、Googleのホームページに飛ばしたり、検索サービスを使わせてもらうアイデアも出ている」(リスクマネジメント室八代峰樹室長)ほどだ。東京本社と5分間連絡が取れなければ、自動的に北九州の編集チームがトップページの運用を行うルールも決めている。バナー広告をすべて外すことで、回線負荷が少なくサイトが閲覧できる震災時専用の特別トップページの開発も進めている。それほど、Yahoo!JAPANトップページへのこだわりは強い。しかし、これまでは、東京本社が機能しなくなった場合、果たして本当にトップページを維持できるのか、計画の実効性が十分検証されていなかった。
今回の訓練では、現地で指揮調整にあたる役員がセスナ機で九州まで実際に移動し、仮想サイトを設けて、実際に切り換えのテストまでを行った(関連記事:これがヤフーの訓練だ)。もっとも、同社では日常的に、東京、大阪、北九州の3拠点で、例えばニュース記事を日中、夜間、深夜など時間を切り分けて編集するなどの連携を行っているが、今回の訓練では、ハード面も含め検証したことが大きな特徴でもある。
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