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□事例:業務効率につながると信じていたテレワークに異変

IT企業のA社では、新型コロナウイルスが国内で発生し始めた今年2月から、社員が在宅でのテレワークを行えるようにするための準備を開始。4月に緊急事態宣言が発生されるのと同時に、原則全社員のテレワークが始まりました。

在宅勤務の開始に伴い、A社では全社員にテレワーク用のシンクライアントパソコンを貸与。パソコンには遠隔監視を取り入れ、パソコンの電源のオンオフや、業務時間外のパソコン利用の制限などでセキュリティー対策や、勤務時間を管理する仕組みを作りました。また、通勤手当を廃止し、代わりに通信費や水道光熱費の負担増に対する一律の在宅勤務手当の支給を開始することにしました。その他、自宅の通信環境の整備や、文房具や周辺機器の購入のための使途自由の一時金を全社員一律に支給しました。

開始前は「セキュリティーが不安」「家では仕事とそれ以外の切り分けが難しい」といった声が聞こえてきましたが、いざスタートしてみると「思ったより効率的に仕事ができる」「通勤時間がなくなり、使える時間が増えた」「満員電車に乗らずに済むのがストレスフリーだ」といったテレワーク肯定意見が多数であり、細かい課題はあるものの、総じて業務効率の向上につながっていました。

A社では、緊急事態宣言解除後も原則テレワークを継続していたので、今月に入って全国的に感染者数が再拡大している状況においても、これまでと特に変わらずに業務を続ける予定です。

しかしここ数カ月、A社では新しい課題が見えてきました。総務部長であるBさんのもとに、以下のような相談が多く寄せられるようになってきたのです。

「自宅にはローテーブルしかないため、貸与パソコンの画面だけで仕事をし続けるのはつらい」
「通信環境が悪く効率が上がらない。回線の工事を行いたいが、大家の許可が下りない」
「契約している回線の通信量に上限がある。家族と共有しているため通信量が気になり、仕事に集中できない」
「子どもの相手をしながら仕事をするので、集中力が途切れて、仕事がはかどらない」

Bさんは、「いろいろな方策を行ってきたつもりであったが、自宅の環境はさまざまであるので、人によっては十分なパフォーマンスを発揮できないことが分かった。このままでは自宅の環境により在宅勤務の生産性に格差が生じてしまう」と懸念しています。