2017/11/22
ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
「スモークジャンパー」とは、1934年に米国ユタ州とソビエト連邦で組織された山林火災初動部隊だ。現在は全米で430名のスモークジャンパーが活躍している。
主な任務は、山林火災の初期消火隊としていち早く火点へ飛び、パラシュートで降下し、延焼拡大を阻止すること。もちろん同時に行方不明者の人命検索や負傷者の救急救助も行うため、パラメディックの資格と技術も持ち、山岳レスキューのトレーニングも受けているため、消防界のエリート集団と呼ばれている。
SmokeJumpers Sizzle Reel 2016 (出典:Youtube)
・チェンソー(燃料、替え刃、シャープナー含む)
・消火手動ポンプバックパック※
・小型ポンプと25mmの20mホース(渓流や池から取水)
・防火帯を作るイグナイター(発火器具)
・折りたたみ式ショベル類
・やけどから身を守るファイアーブランケット
・2日分の水や食料、日焼け止め
・救急資機材(隊員用と要救助者用)
・ビーコン、無線器、GPS発信器、ナビゲーター
・ヘルメットカメラ
など
※■消火手動ポンプバックパック
https://www.vallfirest.com/en/extinguisher-backpacks
ほとんどの資機材は飛行機から現場基地となるランディングポイント周辺へ次々に投下される。スモークジャンパーの主な出動要請は小規模の山林火災発生時であるが、場合によっては大規模な洪水害や土砂災害による災害孤立集落への物資救援、雪崩救助などにも出動することがあるそうだ。
ヘリコプターによる隊員投入との大きな違いは、1回の投入隊員数だ。ヘリコプターの場合、投入隊員数は数名で装備も限られるが、スモークジャンパーに使われている小型飛行機は20名近くの投入隊員と初期消火用消防装備が積載できるため、何よりもいち早く延焼防止、人命救助、ピンポイントな現場情報収集を行えることである。
最も苦しい訓練は個人装備20kgの上に40kg近くの消火用具を担ぎ、上り下りの斜面や道なき道を進んだりする基礎体力訓練。そして、高度1200mと高度600mの両方から、それぞれの降下環境に応じたパラシュートの操作訓練で着地時のショック耐久訓練、及び、想定した火点までの物資搬送訓練だそうだ。
パラシュート降下中の事故対応に必要な空中救助訓練や乗っている飛行機が墜落する、または墜落したときの緊急避難訓練や救急救助訓練も行っている。
いかがでしたか?
米国には、山林火災対応特別隊のスモークジャンパー部隊を始め、渓流や河川救助部隊のストリームライダー部隊などもあり、とてもユニークですよね。
でも、ユニークだけれども、パラメディックが最低基準だったり、高度な知力と体力を有する人材の幅が広いというか、厚みも深いのが特徴だと思います。
日本でスモークジャンパーの必要性を山林火災対応以外に防災視点で考えると、孤立集落への物資救援や、土砂災害時の陸路遮断環境でのアプローチング手段として有効だと思われます。
航空自衛隊のパラシュート部隊が消火、救急、救助をトレーニングするか、または、消防がパラシュート降下訓練をするか?どちらが合理的かは微妙なところだが、出動機体の維持などを考えると自衛隊にスモークジャンパーを組織した方がいいのかもしれない。または、航空自衛隊に消防から出向してスモークジャンパー隊を作ることも可能かもしれません。
スモークジャンパーとして活躍したい方は、下記のウェブサイトに詳細が載っています。
■全米スモークジャンパー協会
http://smokejumpers.com/index.php
また、スモークジャンパーに必要なスキル、訓練、身体能力などは欠きに詳しく載っている。
■スモークジャンパーオペレーションガイド
https://gacc.nifc.gov/swcc/dc/nmsdc/documents/Dispatch/Reference/Interagency%20ISMOG_02_03_2017.pdf
下記には隊員投下時のパイロットの判断基準や投下方法、投下指示のタイミングなどが詳しく書かれている。
■スモークジャンパーパイロットオペレーションガイド
https://www.fs.fed.us/fire/aviation/av_library/ISPOG.pdf
スモークジャンパーの出動要請基準、活動手順や機体選定、出動隊員数と積載装備の基準などは下記に詳細が掲載されている。
■スモークジャンパーの活動基準
https://www.fs.fed.us/fire/people/smokejumpers/national-sj-users-guide.pdf
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp
ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情の他の記事
おすすめ記事
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/26
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方