徳島県の北東に位置し、鳴門海峡の渦潮で知られる鳴門市は、県内でも南海トラフ地震による甚大な被害が懸念される地域だ。ここを本拠地とする大塚製薬工場は、医療機関で使われる輸液の国内シェア50%以上を誇る。同社は現在、南海トラフ地震による揺れや津波から社員と事業を守るべく、BCPの見直しを進めるとともに、災害時における地元住民の自社施設への受け入れなど、新たな地域貢献のあり方を模索している。

編集部注:この記事は「リスク対策.com」本誌2014年7月25日号(Vol.44)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年11月22日)

大塚製薬グループの中では最も早く、2007年からBCPの取り組みを始めた大塚製薬工場。グループ発祥の地でもある鳴門市と隣接する松茂町には、本社と主力工場である鳴門、松茂両工場があり、釧路工場(北海道)、富山工場(富山県)の4工場合わせて、毎日150種類の製品を1日100万本製造している。 

従業員数は2400人弱で、売り上げは1060億円。主力製品は点滴などに使われる輸液で、国内市場の実に53%強のシェアを誇る(2013年12月時点)。災害発生時には負傷者の増加に伴い、輸液のニーズは急激に高まることが予測されるため、輸液の安定供給を達成するというのが同社のBCPの要だ。 

しかし、輸液の生産量が多い鳴門工場と松茂工場は、それぞれ海岸に近く南海トラフ地震による津波の被害が懸念されている。このため同社は、生産工場建屋ごとに防潮堤(防潮板)を設置。工場全体を2mの防潮堤で取り囲むほか、電気設備等は多重防御するなど徹底した対策に乗り出している。