浜松市の鈴木市長(中央)は林業活性化による防災力向上を紹介した

内閣官房は10日、「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」の第36回会合を開催。2019年に決定予定の次期国土強靭化基本計画の策定に向け、外部有識者からのヒアリングを行った。災害復興への工夫、森林資源を活用した産業振興と都市の強靭化、災害対応におけるICTの利活用、減災に資する人材育成をテーマに4人がプレゼンテーションを行った。

関西大学社会安全研究センター長の河田惠昭氏は災害復興への工夫について説明。米国では市単位で強制的に水害保険に加入していることを紹介。また災害復興の大きな問題として所有者不明の土地が九州全体の面積を上回る410万haもある地籍の問題や、上場企業の86%が災害リスクの高い東京に集中していることを挙げた。解決策として地籍については土地所有権とは別に公共的な利活用権を簡単に設定できる制度や、所有者の探索を円滑にできるようにし、土地所有者の責務を明らかにできるようにすることが重要とした。また東京一極集中の解消も呼びかけている。

鈴木康友・静岡県浜松市長は同市の森林を林業振興と防災対策に活用している取り組みを紹介。世界共通基準であるFSC(森林管理協議会)認証制度を活用し、森林整備と地元材である天竜材の販売を拡大。今では市内人工民有林の約70%にあたる約4万4404haがFSC森林認証を得ており、市町村別取得面積では日本一。林業活性化以外に森林の管理がいきわたるようになり、保水力向上など防災力の強化にもつながっているという。

電気通信大学大学院情報理工学研究科准教授の山本佳世子氏は災害対応におけるICTの利活用について語った。1995年の阪神・淡路大震災では電話や交通機関が途絶し、被災地中心部が情報伝達の空白地域となったほか、情報発信元はほぼマスコミだった。しかし2011年の東日本大震災ではSNSなどインターネット環境が整ったことで情報空白地域が最小化される取組が実施されたと解説。今後への提言として平常時から活用されているSNSなどの情報伝達手段をそのまま緊急時も災害対策に活用すること、情報通信環境の強靭化や自家発電といった電源の確保などを挙げた。

兵庫県立大学減災復興政策研究科長の室崎益輝氏は減災に資する人材育成について説明。応急危険度判定や住宅被害調査など災害対応にあたる人材の絶対数が足りないほか、災害対応に必要なシステム作りも追いついていないと評した。問題解決には国民の意識向上のみでなく、防災人材のための養成や研修のプログラムの体系化を進めることが重要だと指摘した。

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リスク対策.com:斯波 祐介