2017/10/24
講演録
【大規模水害対策セミナー】
複数回にわたる水防法改正
水防法の改正についてお話します。2005年に地下街について「避難確保計画」を作成することを義務づけました。2013年にこれをさらに拡大して、要配慮者利用施設や大規模工場等についても努力義務として、避難確保計画または浸水防止計画の作成を実施することにしました。
さらに2015年にも改正を行っています。2011年に東日本大震災、台風第12号・第15号による災害が発生。その後2014年に広島で大雨災害も起こっています。そういったものを踏まえて、「想定外」をなくす必要があると考えました。これまでは200年に1度の雨による洪水で浸水する領域を作成・公表して対策を取ってきましたが、さらに雨の降る量の想定を1000年に1度に拡大。より広い領域について対策を取ることになっています。
加えまして、これまでは洪水だけの対策だったものを、さらに下水が処理能力を超えた場合に起こるなどの内水氾濫にも範囲を広げました。さらに高潮についても、浸水想定区域を作成して公表する制度を創設しています。
昨年の台風10号での逃げ遅れ教訓
つづいて、2017年にも水防法を改正しました。高齢者施設で逃げ遅れ死者が出た2016年の岩手県小本川の氾濫などを踏まえまして、要配慮者利用施設の災害等に対応するために改正に至ったものです。「逃げ遅れゼロ」実現を掲げています。
そのために大規模氾濫減災協議会の制度を法的に位置づけました。協議会に必ず入らなければいけない機関は河川を管理する国または都道府県に加え、気象警報を出す気象台、それから浸水想定区域内にある市町村です。必要に応じて消防・警察などのほか、近隣の自治体、公共交通機関も対象になります。
さらに、「水害リスク情報周知制度」を今回の改正で創設しました。大きな河川については洪水予報や水位周知情報を提供することが規定されておりますけれども、中小河川にはこれまでそれに相当する仕組みがありませんでした。
可能な限りそういった中小河川でも情報を住民に提供していこうということで、水害リスク情報を市町村が自ら持っている場合には住民に対して提供していくという制度になります。具体的には、市町村で過去の水害に関する情報、例えば「ここまで歴史的には水位が上昇した」といった過去の履歴を持っている場合には、それを公開することになります。
また、災害弱者の避難について地域全体での支援を掲げ、要配慮者利用施設においては、避難確保計画作成をこれまで努力義務としていましたけれど、これを義務に改めています。
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/26
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方