2020/09/03
昆正和の気候クライシスとBCP
■日本でも拡大する熱波

国内に目を向けてみましょう。山梨県甲府市や東京の青梅市、埼玉県熊谷市、岐阜県多治見市など、内陸部を中心に夏場は40℃に届く市町村も珍しくなくなりました。2020年8月11日付のニュースでは、群馬県の伊勢崎で観測史上初めて40度を超えたことを伝え、さらに17日には浜松市で国内観測史上最高の41.1℃を記録しています。
こうして筆者が原稿を書いている間にも、猛暑日の日数と観測地点の数は毎日のように更新されつつあります。
意外なことですが、中には「最高気温」を競い合ったり、「日本一暑い町」であることをPRしようと意気込んでいる市町村も時々見かけます。今のところはそんな悠長な構えでもよいのかもしれませんが、やがて危機感を持って真剣に取り組まざるを得ない時代がやってくるでしょう。
つまり、夏場に地平線から太陽が昇り始めると瞬く間に40℃に達してしまうような激暑の時代のことです。日中の最高気温が毎年記録を更新し続け、42℃、45℃、50℃に達するのもそう遠い未来の話ではありません。いつまでそんな状況が続くのかって? こればかりは、文字通りお天道様に聞いてみないことには分かりません。
夏場に40℃が常態化するとすれば、高温の環境を想定していないあらゆるヒトとモノ、つまり社会を成り立たせているシステム全体が機能不全を起こし始めると考えられます。真っ先に懸念される身近な問題と言えば、次の2つでしょう。

一つは熱中症にかかる人や亡くなる人が激増すること。日本の夏はほぼ高温多湿と言ってよい気候です。気温40~45℃、湿度70パーセントなどという日が何日も続けば、体に蓄積した熱を汗として気化できずに具合の悪くなる人が続出するに違いありません。もはや高齢者だけの問題とは言えず、多くの患者が病院に搬送されて医療現場はひっ迫するでしょう。
もう一つは、これまでの多くの海外事例に見られるように、日本でも高温による乾燥化のために森林火災が発生しやすくなる可能性があります。とくに日本の場合、山岳地形が多くフェーン現象が起きやすい特徴があります。

もちろん、野山だけが燃えるわけではありません。街も燃えます。ゆったりと広い庭を持つ住宅が点在する欧米の山間の街とは異なり、日本では里山のどん詰まりまで宅地開発が進み、新興住宅がひしめき合っている地域が少なくありません。しかも、道路の幅が狭く坂も多い。長引く熱波と乾燥化があちこちで山火事を誘発し、多くの山間の街や村で山もろとも街全体が火災で焼失してしまうことにもなりかねません。
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