今回は気候変動を見据えたBCP見直しのポイントについて、これまでの内容を整理するとともに、いくつか追記したいと思います。
(1)気候変動リスクの想定はシナリオベースで
「シナリオベース」といっても、勝手に災害のストーリーをこしらえてBCP対策や対応に当てはめることではありません。ある程度見通しの確かなシナリオのことです。
例えば「2021年~2030年の地球の温度上昇の変化」を1℃(現在)→1.5℃(10年後)とする。この時「急性リスク」と「慢性リスク」については、次のような変化が考えられます。
①急性リスク:台風・豪雨の発生頻度・強度が段階的に高まり、これにともなって洪水・土砂災害も同程度に増加する。ハザードマップの浸水想定レベルも変化しますから、数年おきにマップを見直す必要性が出てきます。
②慢性リスク:夏場の最高気温が40℃を超える日数・地域とも、段階的に増加する可能性があります。フェーン現象や乾燥化が懸念される内陸部の盆地に拠点を置く事業所などでは、極度の高温と乾燥化による火災(山火事を含む)の発生もリスクの対象になるでしょう。沿岸部では、海面上昇により降雨の際に浸水・冠水被害を受けやすくなります。
(2)現在と将来の防災・減災対策は同じではない
(1)の想定から言えることは、例えば「現在~5年後」と「6年後~10年後」とでは、防災・減災対策のとり方が異なってくるということでもあります。
台風・豪雨水害を例にとると、現在は想定浸水深2メートルに対応する対策として土のう、防水シート、排水ポンプ、盛土、止水板などを準備するとします。しかし6年後のハザードマップでは想定浸水深が5メートルとなるかもしれず、前掲の対策に加え、事業所の孤立化を前提とした対策(食糧備蓄、ゴムボート)、事業所の移転等も考慮する必要があります。
一方、熱波の場合、現在7~8月の平均気温38℃の日が1カ月に5日間あると想定し、事務所・倉庫等の遮熱・断熱施工、遮熱塗料、社員の健康管理などを検討するとします。しかし6年後には40℃を超える日が月に10日発生するかもしれず、その対策として屋上・敷地緑化、水冷式の人体冷却服、高温に強い素材・機器・製品等の選定を余儀なくされるかもしれません。
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