(出典:Pixtabay)

先日、自分が今まで書いてきた様々な消防に関する記事を検索していて、約20年前、ニューヨークで国際消防情報協会の企画調査員として、各国を飛び回っていたときに書いた記事を国立国会図書館の検索ページで見つけた。

■<海の向こうの消防事情>
ロサンゼルス郡消防の救急とインタ-ネットによる消防広報 (神谷 早苗)
(「近代消防」/1998年9月号 p110~116)
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4530214-00

かなり余計なお世話かもしれないが、日本の消防局のウェブサイトは広報力が足りないような気がする。

情報先進国のアメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアなどでは約20年前から、各国の市町村消防局によるインターネットを活かした消防広報を研究し、さまざまな消防関係情報を発信してきた。

20年前に感心したのは、各国の消防広報記事の内容のほとんどは、将来に向かって、

・日常災害である火災や交通事故
・季節災害である水難事故や山岳事故
・いつ起こるか予測が難しい各種自然災害
・化学コンビナートエリアの爆発物や毒物、危険物
・火災原因調査からみた具体的な火災予防と対策
・救急法全般
・市民参加型の消防トレーニング


などの予防や対策を具体的に、そして、季節的な予防や注意喚起は2ヶ月ほど前から紹介していること。

消防署の所在地や消防車の写真や住所、過去に行ったイベントなどが載っているだけでなく、専門家が消防士達と住民、特に子供達に対して、過去の事例をわかりやすく解説。予防などの対策を勧めたり、幅広い教育&研究した内容が載っていて、本気で住民に消防業務として、生命・身体・財産を守るための消防情報を今でも発信している。

最近、各国の消防が競うように更新しているのが「消防エピソードシリーズ」で、まるで、テレビ番組のように上手く編集されて、子供から大人まで、幅広い年齢層の視聴者の興味を深めている。

制作しているのは、市町村が特別枠で採用したビデオ編集などができる広報課職員か、消防局内のPIO(Public Information Officer)。自ら現場出動して、撮影してきた映像データや隊員達から集めた映像を部分的に整理して、エピソードとして作成している。

下記はデンバー市の広報局が作成した消防広報ビデオ。女性消防キャプテンが、子供達へ「火災で君たちを助けに来るときには空気呼吸器などを付けて、こんな格好で来るので、怖がらないでね」と話している。子供達の前で、隊員にフル装備させ、空気呼吸器の呼吸音や面体のマイクを通しての声などを聞かせたり、子供達に手袋や防火衣を触らせて「こんな感じで助けられるよ」と抱っこし、消防士が助けに来ても逃げたり、隠れたりしないように教育している。


Rolling Hot: Denver Fire Episode 1 (出典:Youtube/ Denver8TV)

■Rolling Hot: Denver Fire - Episode 2
https://www.youtube.com/watch?v=pnKdJYKehT0

■Rolling Hot: Denver Fire - Episode 3
https://www.youtube.com/watch?v=y_Fz2RUQh8M

まるでドラマを見ているかのような構成だが、住民との対話があったり、消防士の家族が紹介されたりと身近な存在に感じさせてくれる。

下記の消防局では、消防士達の非番日の素顔や指令センターの救急対応事案、山林火災の怖さと消火の難しさなど、市民生活の間近なところで起こっている火災や事故などを投げかけながら、住民自らが予防や対策を行うように導いているように感じる。

■South Metro Fire Rescue PIO
https://www.youtube.com/channel/UCeQ92NVNJQvuRuQ8GVAlytw/videos

下のビデオは、住民広報、防災安全教育、消防士の採用、現職消防士の士気の高揚など多目的に使える映像で、その消防局のステータスさえ感じる。消防士が多く集まるバーなどで、大型スクリーンに映されているとかっこいいと思う。


Firefighter: The Next 48 Hours 出典:Youtube

いかがでしたか?

いずれにしても、消防広報は消防士達にとっても地域住民にとっても、大切なPublic Education(公衆教育)だと思います。

また、未来の子供達の生活の基盤を安全にする知恵と仕組みを具体的に提言し続けるような内容を含んだページがあると、住民とのコミュニケーションのきっかけにもなり、消防の本来に役割を果たすような気がします。

いつか、消防士達が集って、さまざまな消防事情の情報交換やテクニックやアイデア紹介、非番日の過ごし方など、全日本の消防士達が選ぶ、日本の消防局のウェブサイトのベスト10などの企画ができると楽しいと思います。

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
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