当社は、複合機やプリンターなどの情報機器を中心に、製品の開発・生産・販売・サービス等を行っています。売り上げの構成を地域別にみると、およそ日本で35%、アメリカ地域で30%、欧州・中近東・アフリカ地域で25%、日本を除くアジアとオセアニア地域で10%となっています。

私が担当するリスクマネジメント部は、国内外のリコーグループのリスクマネジメントに関する方針を作り、施策を推進する役割りを担っています。また、コンプライアンスと危機管理については直接担当主管区としての役割も持っています。2015年度からは、リスク対応方法の一つとしてグループの損害保険業務についても担当しています。

本日お話する2つのポイントは「海外を含むグループ会社で発生する重大なインシデントについて、どのように日本本社が把握し、それを活用しているか」「海外のグループ会社や従業員・その家族に起こりうる危機に対し、どのように備えるか」についてです。
 

重要なインシデントの報告

以前は、インシデントを担当する各々の部門が、個別のルールを作成し情報を集め対応していました。 情報収集の仕組みは皆バラバラだったので、報告する立場のグループ会社の理解も十分とは言えませんでした。 2007年からそれらの報告方法を整理し、現在のグループ標準にまとめて対応しています。

発生区は、まず自社の本社・経営者に報告をします。報告を受けた本社部門は、その親会社や主管管理部門を経由してそれぞれのインシデントを担当するリスク主管区に報告します。リスク主管区は報告内容を確認したうえで、あらかじめ標準に定められた重大なインシデントについては、グループの経営トップに速やかに報告します。経営トップには、社長、本社部門担当の役員、内部統制担当役員、そして監査役が含まれています。

報告されるインシデント

報告されるインシデントについて、現在グループ標準では7つの項目について報告を求めています。

(1) コンプライアンス違反
グループの信頼を著しく毀損する、または企業活動に悪影響を及ぼす恐れのある会社としての各種法令違反があった場合、また、役員や従業員による業務上の不正があった場合などがこれに該当します。特に業務上の不正については、数年前まで100万円以上の被害があった場合などの基準を設けていたこともありましたが、今は金額にかかわらず、すべての不正について速やかに報告をすることを求めています。

(2) 自然災害や事故
自然災害については、国内と海外で少し基準が異なっています。国内では、震度5以上の地震があった場合、すぐに社員・家族の安否と事業所や設備への被害状況が報告されます。地震以外の災害や震度5以下の地震でも、正常な業務遂行に支障が生じる場合は同様に報告されます。海外については、自然災害はもちろんのこと、昨今特に地域における情勢変化やテロ・誘拐といった事件も頻繁に発生しています。従業員や家族が巻き込まれた場合はもちろんのこと、最近はそれらがなくても事件性が大きく報道等で大きく取り上げられた場合などは、自主的に報告がされるようになりました。

(3) 重要品質問題
世界中で発生した品質問題については、大小を問わず専用のシステムを使い本社の品質本部に報告されますが、その中で特に安全性にかかわるもの、対応に大きな費用が必要となるものなどについては、重要品質問題として経営に報告されます。