EU成立と恩恵
欧州連合(EU:European Union)は1992年2月7日に調印された欧州連合条約(マーストリヒト条約)に基づき、経済通貨同盟、共通外交・安全保障政策、警察・刑事司法協力等のより幅広い分野での協力を進める政治・経済統合体として、1993年11月1日に発足しました。
経済・通貨同盟については、国家主権の一部を委譲し、域外に対する統一的な通商政策を実施する世界最大の単一市場を形成しています。その他の分野についても、加盟国の権限を前提としつつ、最大限EUとしての共通の立場を取ることで、政治的にも単一団体となっています。現在、EU加盟国は28カ国、面積は446.36万km2、人口5億515万人、2016年のGDPは16兆4083億6400万ドルで、ほぼ米国(18兆5691億ドル)に匹敵する経済規模となっています。
EU域内では関税障壁もなく、ほとんどの国がユーロを通貨として導入していることから地域内の為替問題もないため、日本をはじめ海外からの進出、M&Aも盛んとなっています。現在、日本からはEU28カ国に対し、のべ6348社(2015年10月現在)の日本企業が進出しており、2015年末における日本からの直接投資残高は2887億ドルに達しています。これは、日本から全世界への投資残高の22.9%を占めている状況です。
近年における欧州の右傾化
近年におけるEUの経済状況の低迷、一部の国における失業率の高止まり、更に、最近の欧州におけるテロ事件の頻発等、これらの状況に対する欧州各国政府の政策面での対応が後手後手になっている傾向が顕在化しています。また、欧州においては政治不信が拡大しています(例:欧州議会選挙の投票率は実施されるごとに低下している)。
このような状況では各国政府は大衆迎合的な政策をとる傾向が強く、そのことが民族的・宗教的対立を助長する結果となっています。特に、外国人(移民)への排斥を標榜する政党(極右政党等)が近年台頭しており、最近における欧州における選挙では躍進が目覚しい状況です。そのため、これらの政党が欧州の複数の国で政権与党となっている状況です。ちなみに、現状において、外国人 (移民)排斥・民族主義的を標榜する政党が政権与党となっている国としては、ポーランド(法と正義:PiS)、スイス(国民党)、フィンランド(真のフィンランド人)、ノルウェー(進歩党)が挙げられます。
2017年5月7日に行われたフランス大統領選挙の2回目の投票で、エマニュエル・ジャン=ミシェル・フレデリック・マクロン(Emmanuel Jean-Michel Frédéric Macron)氏が2位のマリオン・アンヌ・ペリーヌ・ル・ペン(Marion Anne Perrine Le Pen)氏に大差をつけ当選しました。この選挙では欧州連合(EU)へ肯定的なマクロン氏とEUからの脱退を主張するル・ペン氏の主張が真っ向から対立するという選挙戦でしたが、結果的にはEU残留派のマクロン氏が大差で勝利する結果となりました。これを受け、国際社会は肯定的にこの結果を受け止めています。
2016年6月の英国でのEUに関する国民投票でEU離脱派が勝利し、米国では2016年11月に米国第一主義を標榜するトランプ氏が当選する等、世界的に右傾化が進展する中で、今回のフランス大統領選挙は全世界の注目を浴びました。今回の選挙結果を受け、メディアの中には、今回の選挙は今年3月15日に実施されたオランダ総選挙において、移民受入反対でEUからの離脱を主張する極右政党、自由党が第2党となったものの、得票率が13.1%に止まった結果と合わせ、極右勢力が退潮しているとの論調も見られます。
しかしながら、実際には右傾化は着実に進展しています。例えば、今回のフランス大統領選挙においては、ル・ペン氏は第2回目での得票率は33.9%(得票数1064万4118票)でマクロン氏の66.1%に大差をつけられていますが、前回の大統領選挙では第1回目の投票で3位となった時の得票数642万1426票 (得票率17.9%)は今回(2017年)の第1回目の得票数767万9493(得票率21.3%)へと大幅に得票が増加しています。そのため、右傾化が着実に進展しているとみるべきです。
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