捜索活動を実施するにあたり、最もやってはならないのが、やみくもに戦略もなく捜索することである。まずは捜索する必要がある現場を碁盤の目のように分割し、捜索する場所の優先順位を付ける。次に升目を一つずつ捜索していくのだが、救助にあたる隊員は3mから6mくらいの間隔で横一直線に並び順番に声をかけながらゆっくり前進していく。横の間隔は隊員同士の声が届き、目視できる距離とするので、昼夜、がれきの状況などにより変える必要がある。捜索に漏れがあってはならないし、お互いの活動を安全にするためにも距離は重要となる。上記を鑑みると、碁盤の目の大きさは隊員の人数や現場の状況によって判断する必要がある。全てにおいて重要なのは、「第3章チームの安全を守るICS」でも解説したように、現場のアセスメント(評価)をチームでしっかりと行い、チームとしての活動方針に沿った活動を実施することである。

碁盤の目のようにエリアを分割し、優先順位をつけて升目を一つひとつ捜索していく

1. 要救助者または救助活動の安全環境をつくり出すために物や瓦礫を開放し取り除く活動。
2. 要救助者のトリアージと応急処置。
3. 要救助者をできるだけ早く安全なエリアへ搬送する活動。

これらの活動を行う上で、救助者と要救助者の安全を確保するために安全な活動環境を作り出し、あらゆるリスクを軽減することが重要であるが、いくつかの原則を市民救助隊(Community First Responder、以下CFR)、または民間事業者緊急対応チーム(Corporate Emergency Response Team、以下CERT)メンバーは守るべきである。

• 救助隊の安全が第一(ボランティアや市民レベルが行う救助活動中に2次災害に巻き込まれて死傷するケースが最も多い!)

• 軽度あるいは中程度の損害建物以外の捜索救助活動は実施しない(引き際を決めること!)

• あなた自身の限界を知る(己の体力と気力の限界を知らないことは危険である!活動中にも休憩を取り、水分補給や栄養補給をしながら落ち着いて、健全な精神状態を保ちながら活動すること!)

• 安全手順を遵守する(バディで作業、重量物の取り扱いについては前号参照!)

■てこの原理とクリビング

てこは支点・力点・作用点の位置により三種類に分類され、位置関係により何倍の力を発揮できるのかが変わってくる。重量物の持ち上げには第一種※、移動には第二種※が使用される。 

クリビングは、てこを使用して持ち上げた重量物を安定化させ保持するのに使用。井桁のように組み上げていき、安定化させる。てこで持ち上げただけでは余震や体力の限界が来た時に重量物を安定させ続けるのは困難なので、持ち上げるよりもクリビングで安定させることを念頭に活動する。

※第一種=最も倍力効果が高い。力点を押し下げると作用点には上向きの力が発生する。くぎ抜きやプライヤー、シーソーなどが代表。
※倍力=支点から力点間の距離と支点から作用点の距離で倍力は計算できる。
※第二種=二番目に倍力効果が高い。支点と力点は端に位置し、作用点は中間。力点を持ち上げると作用点も持ち上がる。
※第三種=軽い物を遠くに投げたり、遠くの物を動かしたりするのに使用され、重量物の持ち上げや移動には適していない。

 

■救出方法 

がれきに閉じ込められたり、挟まれた被災者の救出をする前に、圧挫症候群(挫滅症候群:クラッシュ・シンドローム)に留意すること(第6章災害救護(1)参照)。

リーダー:状況把握と活動方針の決定。潜在危険(大気の状況や二次倒壊)や目に見える危険の把握と評価、被災者の状況、瓦礫の重量や強度、テコ、テコの支点、クリビングに使用する部材の強度、どのくらい持ち上げれば救出可能か、余震等が発生した際の退出ルート等を決定し周知する。各隊員の配置を決定し、活動全体が見渡せる位置に立つ。

リフター:リーダーに指定された場所に支点を作成し、指定された高さまで、てこで重量物を持ち上げる。

クリバー:リーダーに指定された場所でクリビングを設定する。

医療/救出係:被災者の頭側に位置し、被災者への声かけと、あとどの位持ち上げれば被災者を救出できるのかをリーダーに報告する。