2017/05/23
災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~
捜索活動を実施するにあたり、最もやってはならないのが、やみくもに戦略もなく捜索することである。まずは捜索する必要がある現場を碁盤の目のように分割し、捜索する場所の優先順位を付ける。次に升目を一つずつ捜索していくのだが、救助にあたる隊員は3mから6mくらいの間隔で横一直線に並び順番に声をかけながらゆっくり前進していく。横の間隔は隊員同士の声が届き、目視できる距離とするので、昼夜、がれきの状況などにより変える必要がある。捜索に漏れがあってはならないし、お互いの活動を安全にするためにも距離は重要となる。上記を鑑みると、碁盤の目の大きさは隊員の人数や現場の状況によって判断する必要がある。全てにおいて重要なのは、「第3章チームの安全を守るICS」でも解説したように、現場のアセスメント(評価)をチームでしっかりと行い、チームとしての活動方針に沿った活動を実施することである。

1. 要救助者または救助活動の安全環境をつくり出すために物や瓦礫を開放し取り除く活動。
2. 要救助者のトリアージと応急処置。
3. 要救助者をできるだけ早く安全なエリアへ搬送する活動。
これらの活動を行う上で、救助者と要救助者の安全を確保するために安全な活動環境を作り出し、あらゆるリスクを軽減することが重要であるが、いくつかの原則を市民救助隊(Community First Responder、以下CFR)、または民間事業者緊急対応チーム(Corporate Emergency Response Team、以下CERT)メンバーは守るべきである。
• 軽度あるいは中程度の損害建物以外の捜索救助活動は実施しない(引き際を決めること!)
• あなた自身の限界を知る(己の体力と気力の限界を知らないことは危険である!活動中にも休憩を取り、水分補給や栄養補給をしながら落ち着いて、健全な精神状態を保ちながら活動すること!)
• 安全手順を遵守する(バディで作業、重量物の取り扱いについては前号参照!)
■てこの原理とクリビング
てこは支点・力点・作用点の位置により三種類に分類され、位置関係により何倍の力を発揮できるのかが変わってくる。重量物の持ち上げには第一種※、移動には第二種※が使用される。
クリビングは、てこを使用して持ち上げた重量物を安定化させ保持するのに使用。井桁のように組み上げていき、安定化させる。てこで持ち上げただけでは余震や体力の限界が来た時に重量物を安定させ続けるのは困難なので、持ち上げるよりもクリビングで安定させることを念頭に活動する。
※第一種=最も倍力効果が高い。力点を押し下げると作用点には上向きの力が発生する。くぎ抜きやプライヤー、シーソーなどが代表。
※倍力=支点から力点間の距離と支点から作用点の距離で倍力は計算できる。
※第二種=二番目に倍力効果が高い。支点と力点は端に位置し、作用点は中間。力点を持ち上げると作用点も持ち上がる。
※第三種=軽い物を遠くに投げたり、遠くの物を動かしたりするのに使用され、重量物の持ち上げや移動には適していない。
■救出方法
がれきに閉じ込められたり、挟まれた被災者の救出をする前に、圧挫症候群(挫滅症候群:クラッシュ・シンドローム)に留意すること(第6章災害救護(1)参照)。
リフター:リーダーに指定された場所に支点を作成し、指定された高さまで、てこで重量物を持ち上げる。
クリバー:リーダーに指定された場所でクリビングを設定する。
医療/救出係:被災者の頭側に位置し、被災者への声かけと、あとどの位持ち上げれば被災者を救出できるのかをリーダーに報告する。
災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/25
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方