■能力開発プログラムによる人材確保

(1)クロストレーニング

クロストレーニングとは、本来は複数の運動やエクササイズを組み合わせて行うトレーニングのことだが、ビジネスの世界では1人で複数の業務を処理できる知識やスキルを身につけるための教育や訓練を指す。

製造業などでは、複数工程の作業をこなせるように教育・訓練する仕組みとして「多能工化」という言葉を使用する。クロストレーニングや多能工化は、事業継続のための代替要員を確保する上で大きな拠り所となるだけでなく、日常的にも業務量の増減に合わせて社員を柔軟にシフト(配置)できるというメリットがある。

(2)インセンティブを組み込んだ仕組みづくり

クロストレーニングや多能工化を人事評価制度に組み込んだり、「力量認定者増強キャンペーン」などを実施して事業運営に不可欠な業務に従事できる社員数を相対的に増やしたりして、重要なスキルを持つ人材をプールしておくとよい。

そして一定期間ごとにスキルや技能を持つ人材を把握し、この人材のプールを参照しながら通勤マップとスキルリストを作成することで、より戦力の高い代替要員を特定・確保できるようになるだろう。

 

人員確保の問題は、指揮命令を行なう対策本部のスタッフにとどまらず、災害復旧対応のために投入される実働・支援部隊をいかに現実的な線で確保するか、スタッフ一人ひとりの顔と力量が見える配備体制をいかに実現するかにかかっている。

スキルアップや多能工化のしくみを整え人材をプール(写真:写真AC)

緊急時の人員確保の問題はすぐには解決しないかもしれないが、社内の担当者だけでなく、社外の専門家などにも参加してもらい、段階的に協議・解決していく地道な努力が求められる。