情報漏えい事故を再発させないために
第15回 オペレーションリスク発生の分析~(内部リスク)
株式会社フォーサイツコンサルティング/
執行役員
五十嵐 雅祥
五十嵐 雅祥
(一財)レジリエンス協会幹事。1968年生まれ。外資系投資銀行、保険会社勤務を経て投資ファンド運営会社に参画。国内中堅中小製造業に特化した投資ファンドでのファンドマネジャーとしてM&A業務を手掛ける。2009年より現職。「企業価値を高めるためのリスクマネジメント」のアプローチでコンプライアンス、BCP、内部統制、安全労働衛生、事故防止等のコンサルティングに従事。企業研修をはじめ全国中小企業団体中央会、商工会議所、中小企業大学校等での講師歴多数。
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□事例:パソコンを盗まれた、USBをなくしてしまった
保険の大手代理店A社は、およそ100名の外回り営業が毎日顧客のもとを訪問しています。顧客訪問に当たっては、新規顧客への営業や既契約者への保全活動のため。データの入ったパソコンを持参する必要があります。
ある日、営業職のBさんは昼食をとるため、訪問先近くの飲食店に立ち寄りました。その日は自家用車を使って営業を行っていたことや、パソコンの入った重いかばんを店の中に持ち込むのが面倒だったため、車の中にかばんをそのまま置いて、財布だけを持って飲食店に入りました。食事を終えて店から出たBさんは停めてあった自家用車の異変に気付きました。助手席のドアが割られ、車に置いてあったかばんがそのまま盗まれていたのです。食事をした時間は20分ほどでしたが、その間に車上荒らしに遭ってしまったのでした。かばんの中には顧客データの入ったパソコンも入っていたため、Bさんは会社に「顧客情報の流出の恐れ」があるものとして報告を行いました。
その3日後、A社では、Bさんと同じ営業職であったCさんが「顧客データの入ったUSBメモリーをどこかに紛失してしまった」と報告してきました。Cさんは顧客データをパソコン内に入れておくとパソコンが壊れたときや万が一盗難に遭った際に仕事に支障が出るからとの理由から、毎日USBにデータをバックアップして保管していたこのことで、そのUSBを「どこかに忘れてしまった(忘れた場所は不明)」という報告でした。A社は、この2つの例を「顧客情報の流出につながる事案」として、取扱保険会社に事故報告を行いました。
A社は保険会社各社から「顧客情報の取り扱いに関する再発防止策の策定と徹底」を厳命され、その対策を決定。2つの事例とも「営業マンの顧客情報に関する意識の低さ」が問題であったとして、「顧客情報をはじめとした機密情報の取り扱いに関する社員教育の徹底」を対策の柱に据えました。
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