2020/03/25
グローバルスタンダードな企業保険活用入門
本社が関与しない問題点とは
日本国内の保険手配を専門部署に分けて担当させていることは、一応機能しているのでまだ看過できるかもしれません。しかし、海外子会社の保険手配は現地任せで本社がリスク管理に全く関与していない状況であれば、それは大きな問題につながりかねません。
例えば、為替の規制が厳しいA国に工場を有する場合、その工場で何かが起これば、その工場の事業復興のためにA国の通貨をかき集めなければいけません。かといって、為替規制が厳しい国ではインフレ率が高いことが多く、その国にキャッシュをため込んでおくと、その価値が下がってしまいます。従って、事業復興をA国の事業に任せっぱなしにするのではなく、グループ全体で資金を集中させることも含めた、財務的なプランと能力が必要であり、グループ全体のリスクマネジメントが必要となるのです。
あるいは、サプライチェーンの中で重要な部品、特に外注がきかない部品をB国の工場で生産していた場合、その工場で何かが起これば、その工場の事業復興はグループ全体の命運を握ることになります。しかも、B国の事業復興を待っていられない可能性もあります。
そのような場合のために、いざとなったときには他の国の工場のラインの一部をその部品の製造に振り向けられるようにしておくなど、グループ全体で事業のリスクをコントロールしておく必要があるのです。そして、このようなグループ会社のガバナンスの強化は、近年の会社法改正や運用見直しの中でより強く求められているところでもあります。
管理が難しい不祥事対策
加えて、海外子会社の管理で難しい問題の一つが、不祥事対策。海外子会社の不祥事で実際に多いのが、現地役員や従業員による着服です。
例えばコマツでは、2015年、同社米州調達センター所長を務めていた元幹部が出張旅費の架空請求により、累計4億円弱着服していたことが判明し、逮捕された事件がありました。
マスコミ沙汰になるような大それた事件は、自分の会社に無縁、と思う経営者が多いことと思いますが、海外子会社での着服事件は、規模の小さいものも含めれば、意外と多く発生しています。
これは、例えば現地の日本人CEOを交代させて引き締めを図っても、簡単に根絶できません。なぜなら、CEOや役員が代わった場合でも、現地の財務担当や営業統括担当の中間管理職は変わらず長く務めることが多いからです。これは、現地の事情をよく知り、同時に会社のことも知っている人材の確保が難しいということに加え、その上司が彼なら適切に管理するであろうと期待してしまうからです。
ところが実際は、現地に派遣された日本人CEOは、現地の業務や商慣習をよく知る中間管理職に厳しく当たることが難しく、他方、それをいいことに、現地の中間管理職が自ら着服したり、現地の取引先と結託して水増しした請求書を出させて着服したりする事例が、意外と多く見かけられるのです。
もちろん、着服による損失だけを埋め合わせればいいのではなく、保険さえかければ十分というわけではありません。海外子会社の管理が甘ければ、ビジネスがうまくいくはずがなく、これは経営問題そのものです。
グローバルスタンダードな企業保険活用入門の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方