当事者防災研究会~要配慮者が自ら助かるための知恵と工夫~
聴覚障がい者への災害時の情報提供について
聴覚障がい者の方々と一緒に災害時のマニュアル作成や手話を用いた訓練を
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
サニー カミヤ の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
大規模災害時では、聴覚に障がいがあったり、音が聞こえづらい人にとっては、音声による災害等の情報が伝わりません。聴こえていれば移動できますが、分からないと避難行動などをとまどうことがあります。
一定以上の規模の各種災害によっては携帯電話のアプリなどにより、自動的に通知されますので、その画面を見せることができます。また停電になっていなければ、テレビの画面で災害規模や地域ごとの避難情報などが表示されることがあります。
下記のビデオでは、災害時に使える14の手話(火災、火災報知器が鳴っている、地震、救急車、出血、警察、緊急、逃げろ、痛み、薬、避難、交通事故、大丈夫?、医者、)が米語の手話で紹介されています。なお、手話は国や地域、言語によっても異なるようすので、災害時に必要な手話の日本語バージョンを作る必要があると思います。
Fourteen Emergency ASL Signs(出典:YouTube)
下の2つのビデオでは、消防士が現場で聴覚障がい者に伝える手話が紹介されています。
Happy Holidays Firefighters | ASL - American Sign Language(出典:Yutube)
Firefighter signs in ASL (出典:Youtube)
消防現場、救急車内や避難所で必要な最低限の会話集など、できれば時系列に起こることをシナリオ化したり、シチュエーションを想定したりして、1つのビデオに4つの手話など、いくつかシリーズにすると覚えやすく作成すると良いと思います。
以下、コミュニケーションにおける留意点とテクニック例です。
■「聴覚障害学生とのコミュニケーションの基礎」
(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センターHPより)
http://www.tsukuba-tech.ac.jp/ce/personal/shirasawa/images/shokuin18/syokuin1.pdf
(1)注視を求める
対集団:電灯の ON/OFF,注目を求める身振り,机や床をたたく,etc
対個人:相手の正面に回る,肩をたたく,手を振る,etc
(2)相手や内容、状況に応じて伝達手段(手話、口話、音声、筆談、身振り)を選択、併用する
相手:被災者のコミュニケーション特性を選択し、教えてもらう
内容:いくつかの事柄が関係する複雑な内容や重要な案件については、手話、口話と併行して要点、キーワードを書き示す。
状況:集団,個別,室内,屋外,etc
(3)自己の理解の程度を明示する
表情(眉・口)/頭(うなずき、かしげ、首ふり、首だし)/手話(分からない、何、もう一度、分かる、etc)
復唱(手話,口話):相手の発話の要旨を繰り返し、相手の確認を求める
筆談による確認:相手の発話の要旨を書き示し確認、修正を求める
(4)相手の理解の程度を確認する
反応の様子(表情・頭・手話)
質問(別な言い方で尋ねる)
反復(別な言い方で繰り返す)
「分かった?」という質問は、確実な理解の確認を得られないことがある。
災害時は停電しているときや急いで逃げるときもありますので、現場の状況に応じて、聴覚障がい者に必要なことを簡単に伝える必要があります。日本語の手話で、災害時の手話集を聴覚障がい者と一緒にビデオを作成する必要性を強く感じます。
特に在宅避難できない状態になった場合には避難所などに行くと思いますが、聴覚障がい者はまわりの人たちの声がきこえないため、コミュニケーションがとりにくく、避難所の中で孤立してしまいがちです。
避難所で配給物資が支給される時や災害情報の更新など、さまざまな情報を音声で得ることが出来ません。聴覚障がい者が自ら、直接的な情報提供が必要なことを表出することも大事ですが、避難所の運営者や周囲の方々が、新しい情報を得たときには確実に伝えてください。周りの人たちのちょっとした配慮があれば、情報から取り残されることなく行動ができます。
避難所などで考えられるコミュニケーションの手法例:
(他にも有ると思います)
・ホワイトボードなどの掲示板上の情報を指さして教える
・読話、口話(話している人の口の形や動きを読むのでゆっくりとわかりやすく話す。方言は?)
・筆談 (紙とペンやホワイトボード、ノートパソコンの画面等を利用)
・手話、指文字、または、手信号(最低限必要な手話を覚える)
・バイブレーションなどの振動とフラッシュにより火災を知らせる振動型災害報知器
・懐中電灯など光で案内したり、場所を伝える。
いかがでしたか?
聴覚障がい者の災害対応としては、下記が使えるようです。
■災害時手話ハンドブック「災害時用 きこえない私たちからのお願い」
(障がい者情報ネットワーク ノーマネットHPより)
http://www.normanet.ne.jp/~ida/bousaimanyuaru/saigai_handbook.pdf
■災害時手話ハンドブック「折りかた」説明図
(障がい者情報ネットワーク ノーマネットHPより)
http://www.normanet.ne.jp/~ida/bousaimanyuaru/saigai_orikata.pdf
また、下記はとても参考になりますので是非、ご一読ください。
■聴覚障害者が 災害時に困ること 願うこと~聴覚障害者災害時支援マニュアル~
(呉市HPより)
https://www.city.kure.lg.jp/uploaded/attachment/5634.pdf
■聴覚障害のある方と出会ったら・・・ (羽村市役所HPより)
http://www.city.hamura.tokyo.jp/0000002875.html
まだまだたくさんありますが、大切なのはその地域の特性に応じて、聴覚障がい者の方々と一緒に災害時のマニュアルや実際に手話を用いた様々な災害対応訓練を行うことだと思います。
聴覚障がい者の方々からの活発的&具体的なアドバイスやご意見をお待ちいたしております。
それでは、また。
当事者防災とは、災害時における要配慮者である、各種障がいをもつ方とその周囲の方々のための防災対策です。本連載では、世界にあるたくさんの当事者防災のヒントを具体例を挙げながらご紹介し、読者の皆さんとともに一緒になって力を合わせて「お互いの命を守り、みんなで助かる」当事者防災について考えてみたいと思います。
(了)
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方