当事者防災研究会~要配慮者が自ら助かるための知恵と工夫~
強い地震で車いすから落ちてしまったらどうする?
当事者が自ら行う当事者防災について
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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カリフォルニア州オペレーションセンター(災害指令センター) アクセス&機能的化オフィス総括責任者のリチャード・デビルダーさんは、先天性四肢切断(生まれつき両腕と両脚がない)という障がいがあり、移動の際には電動車椅子を使用しながら、州民の防災教育を行っています。
彼の防災教育の対象者は高齢者、障がい者、子ども、妊婦を含めたすべての人ですが、特に障がい者と高齢者に対して発災時に出来る範囲で、自分をどのように守るのか。どのように避難し、どう判断するのかなどをビデオを通じてコンセプトを教えています。
下記のビデオをご覧ください。
Access & Functional Needs ShakeOut for People with Mobility Disabilities(出典:Youtube)
リチャードさんが強く伝えていることは、強い地震で車いすなどから転落したり、壊れたりしてしまったときや避難に必要な移動手段がなくなったりしたときには、まず何らかの手段で隣人や家族、近くに居る誰かなど、自分が使える手段を利用して助けを呼ぶことです。
たとえば、助けを求めるための「わかりやすくて響きやすい大声」(※1参照)を出したり、金属を叩いたり、笛や携帯電話などを使える範囲で利用したりすること。そのためには、普段からいざというときに簡単に使えるように具体的な準備をしておくことを勧めています。
また、様々な場所で、機会あるごとに車いすが倒れた場合にどうやって身を守るかのか、どうやって助けを求めるかを考えておくことや、助かることを信じてあきらめないことを教えている。
それには、まず「自分の障がいに応じた助けられ方を自分が知っておくこと」と、それをどうわかりやすく簡単に説明できるカードやメモ、動画などをさまざまな表出方法で準備しておくことも伝えています。
災害の種別も地震だけではなく、火災や大停電、大水害など、住んでいる地域の災害特性を知っておくことで、さまざまな災害に対応できるよう促しています。
さらに災害が収まった後、「在宅避難が可能か」「福祉避難所に行くべきか」「どうやって、誰に連れて行ってもらうか」などの判断ができるようになっておくことも重要ポイントとして教えています。
携帯電話が使えないとき、大声を出しても誰も来ないとき、最悪の事態を想定して、それでも自分自身を守るために何が出来るのでしょうか?
もし、家族が同居していたら、誰が何をするのかなど役割を決めておき、さまざまなシナリオを作って、ファミリー防災計画を作っておくことの必要性を強く伝えています。
以下、リチャードさんからのメッセージの要約:
・防災計画などを考えるときには災害軸で本気になって、災害時に起こりえることをビデオなどを参考に発災を想像して、できるだけ現実的なアイデアを出すこと、希望観測的なことは思い切って捨てて、実際の災害で起こりえることを心で考えて実災害に備えること。
・いつも頼りにしている消防隊は大災害時、あなたを助けるためにすぐに駆けつけてくれる可能性はかなり低いこと。
・年に数回の地域や職場の防災訓練に参加するだけで無く、日頃から、様々な場所で発災したことを想定して、家族や仲間、友人らとどうやって、どこまで、階段等を使って降ろすか?などを練習しておく。
・避難所で長期生活をすることになった際に持参した非常備蓄品が少なくなってきたり、必要なものの準備や足りなくなったときに支援を求めるための「物品支援申請リスト」なども具体的な商品名や個数、種類などを書いたものを準備し、避難時には必ず持参すること。
・アイデアとして、USBドライブやSDカードは防水なので、身につけておいて、自分の必要な個人情報や薬のリスト、家族の連絡先や写真、必要な災害支援金申請書やさまざまな支援申請書類に名前や住所、電話番号、社会保障番号(マイナンバー)など、今、書けるだけの基本データを記述しておくこと。
いかがでしたか?
今回の内容は、防災を仕事にしていたり、熱心に取り組んで居る方には当たり前の内容かも知れませんが、いろいろな障がい者施設や高齢者施設、施設関係者に会うたびに、日常業務に追われて、防災にまで手が届いていない実態を深く感じています。
同じ事の繰り返しでも良いので、繰り返し繰り返し、機会あるごとにわかりやすく伝え、少しでも良いので実践すること。そしてもしワークショップやSNSなどのコメントで指摘したいことがあれば、ダメか良いかの問題を指摘するだけではなく、具体的にどんな改善方法があって、それが、どうしていいのかを共有して、防災に対するモラルと共通認識を幅広く高める必要もあると思います。
※1参照「わかりやすくて響きやすい大声」の例:
助けを求めるときや危険なことをすぐに伝えたい場合、 また、両手も使えず、伝える手段が声しかない場合は、漁師や海女さん等がよく使う、「笛声」を使うと遠くまで聞こえたり、自分が居る方向を伝える可能性が高いことがわかりました。今度、機会がありましたら、笛声の出し方をご紹介いたします。
(了)
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