第5回 災害時、携帯トイレは役立つのか?
発災直後はトイレの需要に調達が間に合わない
特定非営利活動法人日本トイレ研究所 /
代表理事
加藤 篤
加藤 篤
1972年、愛知県生まれ。まちづくりのシンクタンクを経て、現在、特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事。災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、子どもたちにトイレやうんちの大切さを伝える出前授業、子どもの排便に詳しい病院リストの作成などを展開している。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、災害時にも安心して行けるトイレ環境づくりに向けた人材育成に取り組んでいる。日本トイレ大賞(内閣官房)審査委員、避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)などを務める。主な著書に「うんちはすごい」(株式会社イーストプレス)、「うんちさま」絵本(金の星社)などがある。
加藤 篤 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
大きな災害が起きると、給排水設備の損傷等により、水洗トイレの多くは使用できなくなります。それは地震でも水害でも一緒。水洗トイレが使用できなくなる仕組みについては以前に説明しましたので、ここでは省略します。
今回お伝えしたいことは、結論を先にいうと「トイレの初動対応として携帯トイレは役立つ」ということです。
なぜ、今回このことを書きたいと思ったのか。それは、先日ある地域でトイレの備えについて講演をした際、その場にいた方から「実は私、東日本大震災のとき宮城県に住んでいて、携帯トイレがものすごく役に立ったのですよ」と教えていただいたからです。
私は確信していることがあります。それは、被災者が「これ役に立つよ!」というものは、確実に役立つということです。ここ数年の災害において、数は多くありませんが、携帯トイレをうまく活用したという声を聞いていたので、事例を含めてご紹介します。
災害時のトイレ対応はスピードが肝心
以前の記事「第1回災害時に水洗トイレは使えなくなる?」で書きましたが、災害時はかなり早いタイミングでトイレニーズが発生します。水や食料が必要になるより、かなり早いです。
災害時に命を守ることを最優先するのは当然ですが、その後すぐにトイレの対応をした方がよいと言っても過言ではありません。水洗機能を失ったトイレに1人でも排泄してしまったら大変です。
そのため発災直後のトイレ対応としては「できるだけ素早くトイレ機能を確保する」ことが求められます。屋外に災害用トイレを組み立てる、外部から災害用トイレを調達するという方法では間に合いません。この課題に応えられる災害用トイレが「携帯トイレ」です。
携帯トイレってなに?
乱暴ではありますが、携帯トイレをひとことでいうと、うんちやおしっこを入れる袋です。使い方は、普段使っている洋式トイレの便器にとりつけて使用します。袋の中には吸収シートが入っているタイプと、使用前もしくは後に凝固剤を入れるタイプがあります。
携帯トイレのいいところは、使い慣れたトイレ空間を利用できることです。わざわざ屋外に行かなくてもいいし、鍵もかかるので安心です。使用後の処分方法は、市区町村に確認することが必要ですが、大部分は可燃ごみ扱いになると思います。
具体的な製品選びは「災害用トイレガイド」、携帯トイレの使い方に関するポスターや動画は「トイレマガジン」を参考にしてください。ちなみに政府の防災対策に関する基本的な計画「防災基本計画」においては最低3日間、推奨1週間分、自助として備えるものに携帯トイレが位置付けられています。
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方