第3回 浸水時のトイレ対応
汚水は逆流する可能性があります
特定非営利活動法人日本トイレ研究所 /
代表理事
加藤 篤
加藤 篤
1972年、愛知県生まれ。まちづくりのシンクタンクを経て、現在、特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事。災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、子どもたちにトイレやうんちの大切さを伝える出前授業、子どもの排便に詳しい病院リストの作成などを展開している。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、災害時にも安心して行けるトイレ環境づくりに向けた人材育成に取り組んでいる。日本トイレ大賞(内閣官房)審査委員、避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)などを務める。主な著書に「うんちはすごい」(株式会社イーストプレス)、「うんちさま」絵本(金の星社)などがある。
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1.建物の排水設備を理解しましょう
気象庁は、令和元年8月28日05時53分「記録的な大雨に関する九州北部地方(山口県を含む)気象情報 第8号」として、佐賀県南部、佐賀県北部、福岡県筑後地方、長崎県北部、五島に大雨特別警報を発表しました。この大雨により被害を受けられた皆様に心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。
昨年は、「平成30年7月豪雨」が西日本地域に甚大な被害をもたらしました。次から次に起こる災害によって、過去の災害の記憶が上書きされていくことを恐ろしく感じています。ですが、恐れているだけではいけません。現場から学び備えに変えていくことが必要です。
そこで、今回は浸水時のトイレ対応について説明します。
水害が予想される場合、安全な場所への避難が大前提となります。
そして、避難直後から起こるのがトイレニーズです。
これについては以前の記事「第1回 災害時に水洗トイレは使えなくなる?」に書きましたので、そちらを参考にしてください。一言でいうと、発災後6時間以内に約7割の人がトイレに行きたくなるのです。つまり、飲み水よりも食事よりも先にトイレが必要になるということです。
浸水時のトイレ対応を考える上で、まずは建物の排水設備を理解する必要があります。
以下のイメージ図をご覧ください(排水設備にはさまざまな方式があるためイメージとしてご理解下さい)。
当たり前ですが、トイレの先の排水管は下水道につながっています。
よって、浸水するということは下水道管内も満水となり、水位が上がるにつれ、排水管内を汚水が逆流することになります。もちろん、トイレにしたうんちやおしっこは、流れていきません...
2.便器の底にたまっている水の重要な役割とは?
今回、皆さんに知っていただきたいことは、汚水逆流の予兆とトイレ対応です。
まずは、汚水逆流の予兆について。
通常、排水管内には空気があります。その排水管内を汚水が逆流するということは、空気も逆流することになります。徐々にトイレの方へ空気が押し戻されるイメージです。
ところで水洗トイレの便器の底には水がありますよね。この水のことを封水と言います。便器を汚れないようにする、うんちを水没させることでにおいを軽減するという役割もありますが、もう1つ重要な役割があります。それは、下水道から虫や臭気があがってこないようにすることです。水でフタをしているのです。
この封水がボコッボコッと音を立て始めたら、空気が逆流しているサインなので汚水逆流の可能性ありです。便器の蓋を閉めてあったとして、その蓋の裏側が汚水で汚れていたとしたら、逆流によって汚水がハネていることを意味するのでそれも要注意です。
このようなときは、便器内に水のうを置くことが効果的です。
ただし、この方法は汚水の逆流を抑えることが目的なので、トイレは使えません。
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