第1回 災害時に水洗トイレは使えなくなる?
日頃のイメージが大切 「今晩、どこのトイレに行きます?」
特定非営利活動法人日本トイレ研究所 /
代表理事
加藤 篤
加藤 篤
1972年、愛知県生まれ。まちづくりのシンクタンクを経て、現在、特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事。災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、子どもたちにトイレやうんちの大切さを伝える出前授業、子どもの排便に詳しい病院リストの作成などを展開している。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、災害時にも安心して行けるトイレ環境づくりに向けた人材育成に取り組んでいる。日本トイレ大賞(内閣官房)審査委員、避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)などを務める。主な著書に「うんちはすごい」(株式会社イーストプレス)、「うんちさま」絵本(金の星社)などがある。
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1. 水洗トイレは「便器」ではなくシステムです
皆さん、水洗トイレの仕組みを考えたことがありますか?
私たちの暮らしの根幹を支えているライフラインの一つが「水洗トイレ」です。日々、目にするのは便器部分のみなので、水洗トイレとは便器である、なんて思ってしまいます。しかも、ボタンを押すだけで大小便を目の前から流し去ってくれるので、まるで魔法の器です。
ですが、そんな魔法は存在しません。当然ですよね。
水洗トイレの機能を確保するためには、洗浄水を確保するための給水設備、大小便を運ぶための排水設備、そして適切に処理するための下水道施設や浄化槽などが必要です。また、これらの設備や施設を稼働するための電力設備も必要です。
つまり、水洗トイレはシステムとして理解する必要があります。もっと言うと、水洗トイレは水を利用して大小便を運び、適切に処理するシステムなのです。
そのため、大きな地震や水害などで、システムを構築する設備や施設が被災すると、水洗トイレとしての機能は失われてしまいます。オフィスだから大丈夫なんてことはありません。オフィスビルの場合、排水管のずれや下水道との接合部が被災すれば当然、水洗トイレは使えなくなります。停電で断水することもあります。
2. 日頃から、トイレや排泄を話題にしませんか?
平常時の水洗トイレがあまりにも便利なので、この機能が失われてしまったときのことが想像にくいし、思い付かないというのが現状ではないでしょうか。例えば、災害が起きたとき、自身に必要な物資、もしくは被災地に支援する物資として、何が思い浮かぶでしょうか。ほとんどの人が思い付くのは「水と食料」です。
トイレや排泄のことを意識できる人は、ごく少数だと思います。
意識できない原因として、日常会話にトイレや排泄についての話題が上がらないことも影響していると思います。例えば「今日のランチは、何を食べましょうか?」とか、「今晩、どこに食べに行きます?」という会話はありますが、「今晩、どこのトイレに行きます?」なんてやりとりはありませんからね……(笑)
防災といえば「想像力」が重要です。災害時はどのようなことで困るのか、真っ先に何をすべきか、そのために必要なものは何か、今からできることは何なのかなど、想像の連続です。しかし、前述の通り日々の話題に上がらないことは、想像にくいものです。
その結果、水洗トイレが使えない、備えがない、支援もない、という事態が引き起こされます。トイレや排泄はデリケートではありますが、日頃から意識的に話題にすることが必要だと思います。排泄は健康の指標ですし、汚水・し尿処理は公衆衛生や自然環境を考えることにつながります。また、トイレという視点から街中のバリアフリーを意識することもできます。ぜひ、家族や友人、同僚との間で、トイレや排泄を話題にすることにチャレンジしてみてください。
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